第46話 赤子勇者、スマホでネット検索する。
俺の自室で教皇が正坐して俯いている。
否、俺がさせているのだ。理由は後述。
俺は自室にてスマホをぽちぽち操作する。
遊んでいるのではない。
これは立派な勉強だ。
俺は歴史のことを検索して、今の社会がどうなっているのか勉強しているのだ。
生後十ヶ月にして政治のことをネット検索してるとか将来が危ぶまれる気がするが、人間が悪いのか魔物が悪いのかはっきりさせたいからしょうがないだろう。
そして、俺は双方の主張がネットで書き込まれてたので情勢を漸く理解した。
【人間側も、魔物側も……どっちも悪いとこはあるな】
調べれば、確かにエルフの奴隷商売は人間の歴史の負の側面だった。
しかし、魔物側もそれ以前から人間狩猟と称して人食いをやってる奴らはいたのだ。
人間と魔物の力は十年以上前までは圧倒的に人間の方が強かったらしい。
しかし、それを覆す存在が現れた。
魔王のエルフ美少女だ。
圧倒的に綺麗な容姿と莫大な魔力、そして教皇が販売したスマホと俺の黒歴史ノートのコピーを利用して魔王軍を結成。
Twitterに該当するアプリ、「ツブヤイター」なるものには魔王軍用宣伝アカウントなるものがあった。
スマホを販売してしまった結果、各地でバラバラだった魔物が一致団結してしまったらしい。
なんてことだよ。
これってさあ。
【教皇、その……言い辛いんだが、お前が九割原因じゃね?】
教皇は「う」と小さい声を出し、肩を震わせる。
【どちらかと言うと、人間が優勢だったのに……お前が異世界から勇者を喚ぼうとして強力な呪文書やハイテクノロジーアイテムを喚んでしまったのが全ての元凶だと思うんだが】
「返す言葉もありませぬ」
【お前、よく教皇やれてるな】
「ははは。ネットなんて工作すればいくらでも大衆操作できますからね」
俺はムッとした。教皇は半笑いだが、俺がイラッとしてるのを感じてないようだ。
【人間側も魔物側も自分の主張ばっかで相手の意見を吟味してないよな】
「そりゃ……戦争ですから」
教皇は半笑いを止めて真顔になる。
戦争だから、か。それはそうなんだろう。
戦争してないときはあらゆる外交手段が卓上にあるが、戦争するとなったら相手を悪というレッテル貼り。異世界でも前の世界でも、それは変わらないんだろうな。
「でもオーク族やスライム族の人間捕食は問題視されてなかったんですよ」
【問題視されるようになったのは……いつからだ?】
教皇は腕組みし、うーんと言った後に苦い顔で答えた。
「やはり、エルフ魔王が配信し始めてからですね」
【配信?】
「えぇ」
教皇は頷く。
配信してから、人間捕食が問題視されるようになった?
どういうことだ?
【教皇、詳しく説明してくれ】
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