第42話
「俺は、息子ユシアがドラゴンを飼うのを認めます」
よっしゃあああああ!
俺は思わずガッツポーズを取る。
母は信じられないと言った様子で、父をガン見。
「貴方! どういうこと!?」
「いや、話聞いてたら容認した方がいいだろ」
「何でよ!?」
「……ユシア。お前、なぜドラゴンをテイムした?」
父の言葉で教会内の視線は俺に集まった。
そういえばメリットをこちらから話してなかったな。
父は思わせぶりにほくそ笑み、俺に言う。
「理由があるはずだ。言ってみてくれ」
俺は正直に答える。
【……魔王の情報を引き出せないかな、と思ったんだ】
教皇ラングが俺に向かって目を瞠る。
俺は話を続けた。
【魔王は天才だという。俺の能力がスマホによって成立しているというのなら、対策できるっていうのなら魔王の情報を押さえておきたいと思ってな】
教皇も母も父も真剣な顔になり、目を合わせた。
教皇は俺に向かって問う。
「そこまで考えてのことか」
【はい】
その言葉を聞いた父が、自信ありげに母に言う。
「セレス。聞いたか? ここまで考えているなら別にドラゴンの一匹飼ってもいいだろ。人気配信者なんだから金には困らないだろうし」
「……魔王を殺す為、か。確かに大きな悪を討つのに小さな悪を利用するというのは仕方ないですね」
母が怖い顔をしている。張り詰めたその顔は我が母ながら恐ろしいぜ。
「ユシア、いいこと? 絶対に魔王を討ちなさい。それならドラゴンを飼っていいから」
【は、はい】
「魔王は有力な魔物達に
え、俺の配信を魔王が?
嬉しい。
敵さえも見てくれるってことは視聴者数増加に繋がる。
相手の嫌なことやったら離脱するのが普通だ。
魔王からすれば俺は迷惑系配信者でしかない。
勿論、悪いのは魔王の方だ。
あいつは報いを受けるべきなんだろう。
だけど、見てくれるというのはやはり嬉しいものだ。
へへへ。
俺の口元がほころぶ。
「ユシア……嬉しそうね」
母は腕組みしたまま、俺を見て眉を顰める。
俺はびくっと背筋が動く。
【う、うん】
「不謹慎よ。真面目な話をしているって言うのに何が面白いのよ」
【俺の配信を敵も見てくれるっていうなら配信者として冥利に尽きるって思って】
俺の言葉は教皇や父や神父も驚いた。
母は顔を真っ赤にして近寄ってくる。
「ユシア! 貴方ねえ、死んだら何もかもが終わりなのよ!?」
【は、はい……】
「ふざけんじゃないわよ! 魔王が貴方の動画を見たら……個人情報を割り出すかも知れないし、スキルの対策だって立てられちゃうかもしれないでしょ!?」
【ご、ごめんなさい】
母にすごまれ、俺は泣いてしまう。
この母、怖い。俺は怒られてしまう。
結果として、ドラゴン飼育は許可が出た。
魔王討伐の必要というのは人間側にとって火急のことらしく、魔王に比べたらドラゴンなど取るに足らない存在らしい。
それほど強い奴が攻めてこないということは対策をしているか、俺のスキルはそれ程に強いのだろう。
教皇曰く、「三日以内」に占領された王都へ向かって討伐軍を派遣するらしい。
俺は明日でもいいくらいだが、色々と準備があるそうだ。
会議は終了となり、俺は腹が減ったので母とシスターから母乳を貰った。
スキル使用して疲れた後の母乳はたまらなく上手かった。
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