第40話 ユシア一家、ドラゴンをペットにしていいかどうかで意見が割れる
ユシア一家緊急家族会議。
教会を貸し切って鬼の様な顔をした母が主催した。
会議の進行役を買って出たのは何と教皇だ。
俺の隣には教皇側近の神父が座ってくれてる。
「では、会議を始める。議題はドラゴンを飼っていいかどうか?」
悲しげな顔でラング教皇が口にした。
まじ可哀想だな。飼っていいに決まってるだろ。
反対側の席で、母が挙手し発言。
「教育上、ドラゴンの飼育はよろしくありません。とっとと殺すべきです。また、我が家の家計は本当に切迫していて……余裕がないんです」
深刻な顔で母は告げた。これなら論破できそうだぞ。
今度は俺が挙手し、発言。スマホに魔力を注ぎ込む。
【それは偏見です。犬猫を飼って豊かな心が育まれるという話もあります。ドラゴンを飼ってもいいはずです。また、家計に関してなんですが私のチャンネルが収益化しまして、今投げ銭が三十億くらいあります。これで餌代などは何とかできるでしょう】
母が挙手し、
「ユシアちゃん! 小さい頃からそんな大金を持つなんて歪んだ金銭感覚になるに決まってるわ! 没収します!」
【子供に対する人権侵害です! 僕が稼いだ金は僕が使うべきだ!】
俺と母が睨み合う。漸く果たした収益化の夢、ここで終わらせてなるものか!
親相手だろうが屈しないぞ!
「……分かりました。取りあえず餌代は問題無いということで大丈夫です」
分かってくれたか、ならあとは教育上の問題だな。
ドラゴンの生態とか理解してた方が絶対冒険者になったり配信者になるならプラスだと思う。そこを言えば問題ないだろう。
「まず、ドラゴンですが……近隣住民を恐怖させてしまうのは間違いありません。そもそも、猛獣と一緒に住むなど私達だって怖いです。いかに安全と言われても生物的本能として怖がってしまいます。だから、精神的に怖いんですよね」
俺は失念していた。
確かにその通りだ。
俺がどれだけ安全だと説明したところで近隣住民は怖がること同然だし、怖がられて余計な偏見を持たれるかもしれない。
悪目立ち、というわけだ。
俺は父をチラ見した。
父であるゼウルは、難しい顔をしていた。
【父様はどう思いますか?】
「えっとな」
「貴方、ちゃんと言ってよ」
「えぇ……」
「教育上良くないわよ!」
父様は困ってしまっているようだ。
そりゃそうだろう。母の言い分も分かるだろうし、俺を説得するのは骨が折れそうだ。
教会の入り口で、入りきらなかった図体のでかい黒龍がチラ見してきた。
〘あの、僕の希望としては生きられるなら街じゃなくても良いんですけど〙
「あんたは黙ってて!」
〘す、すみません〙
黒龍は母の鋭い言葉に平謝りした。
こうなると、ドラゴンの威厳もあったものではない。
彼も生きるのに必死か。
母は俺をキリッと睨み付けた。美人とは言え、母だ。
睨まれて怖い。
「ユシア、さっさと殺処分してきなさい!」
【え……】
「あれを処理できるとしたら、貴方か教皇くらいのものです。教皇様の手を患わせるのではなく、自分の不始末は自分で付けなさい!」
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