第38話 生き残ったドラゴン、土下座してくる

【俺のペットになってよ】


〘ふざけるな! 我らは魔物の中でも誇り高き種族ドラゴン! 人間の配下になんてなるものか!〙


 ドラゴンロードの後ろから〘そうだそうだ〙〘ドラゴンロード様の言うとおりだぜ〙〘誰が人間なんかのペットになるか!〙と他の黒龍が騒いでいる。


 やれやれ、交渉は決裂……かと思ったら。


 二匹、いや三匹ほどの黒龍が他の黒龍を襲い始めた。

 俺が「一撃必殺」を付与しているので、ドラゴンロードさえも一撃で屠られる結果になった。


 やった!

 俺がコメント欄を確認すると、


――――――――――――――――――――――

:仲間割れwwwww

:おいおい…

:ドラゴン達はただでさえプライドが高いって有名なのに

:ドラゴンロードが一撃、だと……

:裏切りwwwww

:ドラゴン倒すのなんて教皇以外無理だと思ってた

――――――――――――――――――――――


 コメントが一気についた。お、俺のチャンネル登録者数が二千万人になってる。

 よっしゃ。これなら魔力量がもっと増えるぞ。


 黒龍達は殺し合い、ぎりぎりの戦いを最後の二匹がしている。


〘Guuuuuuuaaaaa!〙

〘Gyaaaaiiiiiii!〙


 俺からすれば似たような黒龍、だが彼等にも一応別々の自我があるのだ。

 決着が着き、最後の一匹が残った。

 飛翔する黒龍は俺の近くまで来て、俺に向かって土下座する。


〘勇者様、我が命をお助け下さいませ〙


 俺はスマホを確認する。一応、テイムしていいかどうかネットの世論を知っておかないとな。


――――――――――――――――――

:ドラゴンの土下座、草

:wwwwwwwwww

:ドラゴンって誇り高い魔物では?

:君主殺して仇敵に土下座とか笑えるwww

:恥知らずwwwww

――――――――――――――――――


 どうやら、俺がテイムすることそのものを問題視する声はないらしい。

 俺は母をちらっと見る。

 母は呆然とした顔で黒龍を見ている。

 驚きはあるけど、文句はないのかな?


【えっと……じゃあ、殺試合(デスゲーム)、一時停止っと】


〘……〙


 ピクリ、と黒龍が動いた。俺を殺そうとしたのだろうか?

 まぁ、それをされても「強固防壁」は解除されてないから意味は無いんだけどな。

 その時は俺が「ほのぼの炎」で殺すだけだ。


 俺は土下座してくるドラゴンを見たまま、スマホに黒い魔力を操作してブラウザ画面のようなものをドラゴンの目前に表示させる。


 ブォン、という動作音と共に浮かび上がると同時にドラゴンはチラ見。そして絶句した。


『契約しますか?

1、勇者ユシアの配下となり、主人の嫌がることをしないか?

2、人間界の法律を守ること』


 ドラゴンはふるふると肩を震わせ、噎び泣き始めた。


〘勇者様!〙


【何だ?】


〘お願いです! 我の家族だけは、我の家族だけは……助けてくれないでしょうか!?〙


 ドラゴンは滝のような涙をぼろぼろ流し、俺に再び土下座した。

 こいつ……家族の為に仲間を殺したってことか。

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