第37話 魔王は天才らしい

 ドラゴンロードは俺をギロリと睨み付けると、勝ち誇ったように言う。


〘くははは。勇者ユシアよ。お前のスキルは凄まじい。この通りだよ……〙


 ドラゴンロードは十三本の支柱の内、一つを見て息を吸い込んだ。

 そして。


〘ロードブレス!〙


 黒龍の咆哮に黒い魔力がこもって――俺の立てた支柱にぶつかる。だが、びくともしない。

 ドラゴンロードは舌打ちし、他の黒龍達は涙目になる。


〘これほど強固な結界はこの世界のどこにも存在しないだろう。お前の勝ちだ。しかし……魔王様が必ずや、お前を仕留めてくれると我は信じている!〙


 俺は折角なので、ドラゴンロードに質問することにした。


【俺より魔王のが強いと思うか?】


 ドラゴンロードは頷く。


〘無論だ。この黒き結界は大したもので、発動されたらひとたまりもないだろうが……魔王様なら必ずや、貴様への対応をしてくれるはずだ〙


 スキルそのものは俺のが上ということか。

 殺試合(デスゲーム)、まじ凄いな。

 うーん。

 しかしドラゴンロードよ、そんなこと言って良いのか? と俺は思ったのだが、コメント欄をチェックすると。


――――――――――――――――――――――――――

:人類おわた

:草生えねえ

:セレスさん、これちょっとありえないよ

:魔王軍に勝てると思ったのに

:あの天才魔王にはきっと勝てねえ……

――――――――――――――――――――――――――


 コメント欄は悲観的な意見で占められている。

 まじかよ。

 ったく。

 もっと俺を信じて欲しいぜ。


 しかし……天才魔王か。

 このスキルを見ても尚、ドラゴンロードも俺に勝てると言ったのだ。

 だったら、本当に魔王は俺を凌ぐだけの強さを持っているかもしれない。

 魔王、どんな奴か知らないが……俺自身、警戒を強めといて損はないだろう。


 一分の制限時間が近づいた。

 参加者を殺さねば、首の輪が爆発する。

 黒龍達は共に一撃をかまし合い、悲しみにくれた顔をする。


〘勇者よ! 貴様は強い! だが……最終的には我ら魔王が勝ってみせる!〙


【なぁ、思いつきなんだがよ。俺のペットにならないか?】


〘は?〙

〘え……〙

〘何?〙

〘どういうこと?〙


 黒龍達は戸惑っている。俺の意味が分かってないんだろう。

 俺はスマホを覗く。


――――――――――――――――――――――――

:ペット?

:魔物ってペットにできるの?

:無理だろ

:あいつら人間を自分達より格下と思っているからな

:プライド高いんだよな~

――――――――――――――――――――――――


 成る程。

 スマホを見ると、異世界の常識を少し理解出来る。

 この世界では基本的に人間より魔物の方が格上なんだな。

 だったら……あのスキルはレアなのかもしれない。


 俺は黒龍達に向かって呟く。


【テイムだよ、テイム】


〘〘〘〘〘!?〙〙〙〙〙〙


 俺はニヤリとした。

 動揺する黒龍達に向かって俺は言葉を告げた。


【俺にテイムされないか? 俺のペットになった奴だけは生かしてやるよ】

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