第35話 ドラゴン達、仲間を殺して大泣きする

 俺はうっきうきにスマホで撮影する。

 えへへ。これで俺も人気インフルエンサーの人生が送れると思うと楽しい。


【さて、ドラゴンの皆さん。貴方達に「一撃必殺」を付与しました】


 俺はほくそ笑む。


【さぁ皆さん。これで一撃でお仲間を殺せます! 殺し合って下さい!】


 空を羽ばたく多くのドラゴン達が一斉に俺を睨む。

 中でも一番大きな黒龍、ドラゴンロードが俺に咆えた。


〘ふざけるなよ、人間! 我らは誇り高きドラゴン! 汝如き赤子の言うことなどきかん!〙


 ドラゴンロードが咆えると、〘そうだそうだ!〙〘ドラゴンロード様の言う通りだぜ!〙〘赤ん坊ごときがドラゴンに命令するんじゃねえ!〙とか他のドラゴン達が咆えやがった。


 俺は溜息する。


【首爆弾(ヘッドボム)】


 カチャリ、という音がドラゴン達の首元からする。

 全てのドラゴン達の首に輪の形をした爆弾がつけられたのだ。


〘な、何だこれは……外せぬ!〙


 ドラゴンロードだけでなく、他のドラゴン達も慌てふためいている。


【それは爆弾だ。一分以内に仲間を一人も殺さなければ、お前達の首は爆散する】


〘な、何を……〙


 ドラゴンロードの額にぶわっと嫌な汗が流れる。

 ドラゴン達は慌てふためくばかりで、首輪を攻撃しても破壊することはできない。


――――――――――――――――――――

:頑丈だな

:この能力やばすぎだろ

:実際発動されたら打つ手なしかよ

:人間側の能力で良かった

――――――――――――――――――――


 俺はコメントを見て、反応を確かめる。

 うーん。もうちょっと盛り上がってくれるといいんだけど。


 しかし、あと三十秒で全員の首輪が爆発する。そうなれば、少しは良い絵になるだろう。

 その瞬間を、きっちり逃さないようにしよう。

 俺がスマホを構えているのが気に入らなかったのか、ドラゴンロードが突進してきた。


 激突。しかし、俺にも母にもダメージはない。

「強固防壁」はダメージ判定を無効化することができる。俺より魔力が高くない限り、この守りは突破できない。


【ドラゴンロード、あと二十秒だな】


〘!〙


【お前らの爆死、楽しみにしてるぜ! ははは】


〘きええええええい!〙


 ドラゴンロードは俺の言葉に腹がたったのか、突如として近くにいた一匹の黒龍を殺した。

 配下のドラゴン達はそれを見て恐怖し、戸惑っている。


――――――――――――――――――――

:やべえええええww

:裏切りwwwww

:同族には優しいって言われてるドラゴンロードがw

:草w

:仲間殺してるwwwwww

――――――――――――――――――――


 おぉ、コメントは好意的なものが多いな。


 ドラゴン達が泣きながらドラゴンロードに近づいている。


〘ドラゴンロード様!〙

〘何をされているのですか!?〙

〘敵の言葉に従うなど……〙

〘仲間を手に掛けるだなんて……〙


 ドラゴンロードは苦しそうな顔をしながら、配下の者達に言う。


〘お主達、仲間同士でも良い。一体だけ殺せ〙


 ドラゴンロードの言葉を聞いて、他のドラゴン達が戦慄している。

 俺はスマホを覗くと、


――――――――――――――――

:wwwwww

:カワイソスwwww

:lolololol

:ドラゴンロードは賢いなぁ

:そりゃねw

――――――――――――――――


 !

 ドラゴンロードの行動のお陰でコメントが増えた。

 おぉ……ありがとう。ドラゴンロード。

 これで配信者として食っていける。


 見れば、昨日より俺の登録者が増えている。

 え……登録者一千万人!?

 マジ!?


 う、嬉しい……俺は思わず涙が出てきた。


 ドラゴン達は大泣きしながら同族狩りを始めている。

 俺はそれをスマホで撮影。

 視聴者数の伸びを見ながら俺は至福の傍観を楽しむのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る