第32話 おぎゃった翌朝、襲撃をくらう。
「ばぁうわぅばぁ~」
俺は大きく欠伸をした。朝陽が窓から漏れている。どうやら新しい一日が始まったらしい。
俺はごろりんと回ってはいはい姿勢になった。
そろそろ赤ん坊の肉体にも慣れてきたぜ。
俺の赤ちゃん用ベッドの傍では両親がまだ寝ている。
昨日、教会を去った後の記憶はない。気が付いたら寝てしまっていたのをこの寝床に両親が運んで来てくれたのだろう。
ここはどこだ?
俺の家じゃないはずだが。
俺は頑張って二足歩行をして、窓の外を眺めようと移動し――成功。
どうやら昨日の教会近くの宿泊施設のようだ。ふむ。
「あ、ユシアちゃん起きたのね」
俺が振り向くと、母が起きていた。それにつられたのか、父もがばっと起き上がる。
「おぉ、二人共おはよう」
「ばぶぶ!」
「おはよう」と母。
俺は母に抱っこされながら、教会の方へと移動する。
教会の中には簡単な食べ物が用意されていた。
「びひゃぁ~~~」
俺は食欲を駆り立てられた。粗末なものではあるが、両親が食べてるものよりなんか美味しそうだったのだ。
俺を抱っこしたままの母が笑顔で、
「ユシア。食べたいの?」と聞いてきたので。
「ばぶ!」
と俺は頷いた。
俺に異世界特有のデザインをした何かを挟んだパンを母はくれた。
……そこそこの味だ。美味しい。フルーツサンドって感じだな。
「美味しい?」
「ばびゅ~♪」
幸せな気分になり、頬が緩む。うん、食い物っていいな。
「これね。プラハヤデの特産品……フルーツパンなんだけど、昨日の戦いで農産物が被害あったらしいから当分食べられないものなの」
「ばびゅう……」
っく、魔王軍め、許せねえ。食い物の恨みは恐ろしいぞ。
「ユシア、見て」
「ばぶ?」
母は俺に向かって街を指差した。
朝陽が彩るのは戦火に塗れることなかった綺麗な街。
レンガ造りの家屋と青いタイルの屋根がコントラストを成してて心を弾ませる。
「ばぶばぶ」
「綺麗でしょ?」
「ばぶ」
俺は頷いた。綺麗な街だ。
これを建てた大工も設計した建築家達も良い仕事をしたと思える見事なデザイン。惚れ惚れするね。
と思ったら何かがやってきた。
「ばぶ?」
「どうしたの、ユシア」
「ぶ!」
俺は空の一点を指差す。黒い物体が飛んできている。あれ、何だ?
「ちょ――あれ、ドラゴンじゃない!」
「ばぶ!?」
空にある黒い点は高速で接近してきた黒龍だった。
黒龍は街に近づいてきて――炎を吐き出し、街を破壊し始めた。
青い屋根は燃えさかり、赤い炎が街を覆っていく。
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