第29話 転生勇者、お尻ぺんぺんされる。
俺は今、赤く腫れるほどお尻を叩かれてる。
叩いているのは母だ。
「この、この!」
「びゃぁ、びゃあ!」
俺の目に涙が浮かぶ。
うぅ……痛いよぉ。
教皇ラングがおろおろとしながら、母に言う。
「セレスさん。その、私は怒ってないので」
「教皇様は黙ってて下さい! 教皇様の土下座をLive配信するなんて不敬にもほどがある」
ぺんぺんぺんぺん! 俺の尻が叩かれ、良い音が部屋に響き渡る。
「ばぶぅ!」
「この!」
「びべぶ!」
「このぉ!」
母は百回以上俺にお尻ぺんぺんしてきた。こんなのあんまりだ。
わざとじゃないと言うのに。
見かねたのか、父(ゼウル)が母の腕を掴む。
「もう止めてやれ」
「貴方。これは教育よ」
「体罰は趣味じゃない」
「……分かったわ」
漸く俺はお尻ぺんぺんから解放された。ふう、酷い目にあったぜ。
「いいこと、ユシアちゃん」
「ばぶ!?」
俺は母に指差されびくっとした。体に恐怖が刻まれている。
「次、不敬なことしたら千回以上、お尻ぺんぺんだからね!?」
「ぼんば~」
そんな~。わざとじゃないと言うのに。コミュを取ろうとしたら、Live機能がオン になってたっていうのに。とほほ。
俺は俯く。
「まぁまぁ」
教皇が場を取りなそうとしてくる。っち。この男は英雄らしいが、お陰で酷い目にあった。今後は土下座禁止にしないとな。
「私は怒ってません。それに私が自発的にしたのです。ユシア君に罪はありません」
教皇、正論言えるじゃねえか。それを言うならせめてお尻ぺんぺん十回目くらいで言って欲しかったぜ。ほぼ、傍観者だったよな?
悲しいよ。
と思ったら、ぐ~とお腹が鳴った。
教皇と側近、父と母が俺を一斉に見て笑う。
っく、悪いかよ。魔力を使うと腹が減るんだっつーの。
「ははは。英雄ユシア君もこう見ると年齢通りの赤子ですな」
教皇の言葉に、笑いながら父が頭をかく。
「全く、その通りですね。神童と噂されてびっくりしましたが……こうして見るとやはり可愛い我が子には違いない。ははは」
父は屈託無く笑う。教皇の側近が咳払いし、
「では教皇様。ユシア殿はお食事の時間があるでしょうからここまでにしましょう。続きはまた後で」
「おぉ、そうだな」
教皇達が俺や両親に挨拶し、部屋を出て行く。あいつら、暇なのかな。また後でってことは何か話をしに来るんだろうが。
「ゆ~し~あ!」
母が俺をぎゅっと抱きしめる。生温かくて大きな弾力あるものが俺にあたる。おっぱいだ。
母は服を脱いで、俺に乳首を押し当ててくる。
「はい」
「……ばぶ」
俺は授乳した。腹が減ってるんだから仕方が無い。
だが屈辱だ。離乳食は生後六ヶ月から摂ることが出来るが、二歳くらいまでは母乳が推奨されているのを何となく知っている。
俺は生後十ヶ月。栄養目的の為、母乳を飲むしかない。
俺が吸っていると、母は頭を撫でてくれた。どうせ撫でるなら尻にしてくれないかな? まだぺんぺんされてたとこが痛いんだよ。
「ユシアちゃん。貴方は凄いわねえ」
俺は無視してやった。一心不乱に美人母の母乳をちゅーちゅーと吸っていく。
「貴方は今日、沢山の人の命を救ったのよ? それはとても偉いことなの」
誇らしげに、悲しげに母はそう言う。ふん、無視だ無視。ちゅー。
「でもね、力を持つことはそれ相応の責任があるの。こんなこと言っても、分からないかな?」
俺、十歳児だぞ? よくそんなこと言えたな。理解できると思ってるのか? 出来るんだけどさ。あ、なんか出が悪いな。
「ばぶ、ばぶぶ」
「え? 母乳が片方出ない?」
「ばぶ」
俺は頷く。母は笑顔でもう片方の乳首を俺に当てた。
「ユシアは食いしん坊……いえ、飲んだくれね」
「ぶぅ……」
母よ、その言い方はどうなんだ? まるで俺がアル厨じゃないかよ。
「ふふふ。好きなだけ飲んでね。貴方はきっと、徴兵を受けて勇者として……魔王と戦わなきゃいけない」
母の声は掠れ、その肩がぶるぶると震えた。そして俺と母を優しく父の腕が包み込む。父の腕は冒険者として鍛えられ、大きくたくましかった。
俺は母の気持ちを漸く理解出来た気持ちになった。この世界で人間が絶滅するかって勢いで魔王軍に殺されているなら、対抗出来るのは俺しかいない。
しかし、それは赤子に人類の命運を託すという途方もない行為だ。
母が苦しむのも分かる。
……何が何でも勝たなきゃな。とは言え、俺が負ける未来なんて想像もつかないんだが。
あれ?
「ばぶぅ」
「え、本当?」
母乳が切れてしまった。
「嘘でしょ、ユシアちゃん。貴方どんだけ飲んだくれなのよ」
「ばぶぅ……」
俺は腹ぺこだからか、母の母乳を飲み干してしまった。だが、それで済む話でもなかった。
俺のお腹がぐーっと鳴る。
両親は俺のお腹をガン見した。
「ゆ、ユシアちゃん」と母。
「お前……あれだけセレスの乳を飲んでまだ飲みたりないって言うのかよ。この飲んだくれめ!」と父。
どうしよう。腹が……減ったなぁ。
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