第27話 転生勇者、お偉い議員を炎上(物理)させてしまう

「ど、どういうこと!? 彼は元老院のバルス議員よ!」


 母は強張った顔で燃えた人を見る。

 っく、俺のスキルを解除しないと。

 俺はほのぼの炎をバルス議員から消した。バルス議員はかなり燃えているが、母が駆け寄り、


「ヒール!」


 治療の呪文を唱えた。バルス議員は死亡を免れる程度に回復したようだ。


 まずい、まずいぞ。

 これ放送事故だろ。

 嘘だろ、おい。

 リアルに炎上しちゃうやつだろおおおおおおお!


 俺の配信者生命、終わったわ。

 なんでこんなことになるんだよ。

 元老院議員って偉いよな?

 偉い人を炎上させるとか、やっちゃいけないだろ。

 呪文を打ち間違えたってことだよな……。


 あぁ、もうダメだ。

 俺はうとうとし、最後にコメント欄をチラ見した。


――――――――――――――――

ペペロン:ほのぼの炎が議員に聞いたってことは

イカス:そうか!

インス:まじかよ

モブデス:神 展 開

カルボ:やべえだろ、これ

――――――――――――――――


 ……何か、炎上してないっぽいな。

 なら良かった。

 俺はとうとう、寝落ちした。






 ……パチリ。

 目を開けるとそこは、オフホワイトな病院の一室だった。

 とは言え、設備そのものはそこまで発達しているようには見えない。

 だが輸血用パックや変な水晶などが置かれているところを見ると全くの未開な病院とは言いがたいようだ。

 どこだ、ここ?


 俺は赤ん坊の体をごろりと横回りして、回りをちらちら見た。

 俺は赤ちゃん用ベッドに入れられたらしい。

 回りには檻のような木の柱が沢山ついてる。

 そして、母と父がスヤスヤと俺のベッドに突っ伏して眠っている。

 疲れていたようだ。無理もない。

 スライムと戦うなんて無茶苦茶ストレスあっただろうしな。


 俺が加護を付与したとは言え、最初は怖かったから神経すり減らしただろうに。

 よし。

 安全な場所のようだし、俺ももう一眠りするとするか。


 俺は四足歩行(はいはい)の姿勢からまたもや横回りして、仰向けになった。

 ふう、この体制は落ち着くぜ。


 と思ったら、ガラララと扉が開かれた。

 俺がちらりと向くと、何やら威厳たっぷりの宗教服を着こなした老人が入って来た。


「おぉ、勇者様。お目覚めになられましたか」


 老人は俺を見て、深々とお辞儀をした。

 誰かは分からんが偉そうだ。無視は良くないと思って俺は返事した。


「だぁ」


 しまった……赤ちゃん言葉しか話せねえぞ、おい!

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