第25話 転生勇者、元スライムキングを脅す
俺は、はいはいして元スライムキングのスライムに近づく。
スライムは近づいてくる俺を見てぶるぶると震えている。
さらに、魔力がごっそり抜け落ちたのか少し脱色さえしている。
【おい、スライム】
〖は、はい!〗
スライムは俺の言葉でびくっと動く。
これから殺すわけだが、やはりこいつら知性あるのを実感する。
なのに人間を差別し殺しにかかってきたわけだ。許せねえ。
【なぜこの街を襲った?】
〖そ、その〗
【今すぐ殺されたくなければ答えろ】
〖は、はい! その……魔王軍の侵攻作戦です。プラハヤデを僕達スライム軍が落として、その対応をしようと教皇軍が出張った時にドラゴン部隊で教皇庁を攻撃。その後、魔王様の本体が人間の王様を殺しにかかるという算段です〗
【何!? ということは魔王軍は軍隊を三つに分割して攻めてきてるってことか?】
〖は、はい。その通りです〗
っく。
舐められたものだ。
俺は歯軋りしてしまう……と思ったら歯が生えてねえ。
なんだよ、俺babyじゃねーの。
って今はふざけてる場合じゃねえな。
【各個撃破されない自信があったってことだな?】
〖は、はい。僕らスライム部隊もドラゴン部隊も撤退が得意なので。それにいざとなれば魔王軍本体がさっさとこの国の首都を落として、ドラゴン軍と連携すれば教皇軍に対して強く出れると魔王様は考えました〗
……?
地理を把握する必要があるな。
俺はスマホで検索した。この世界にもどうやら検索エンジンと地図はあるらしい。
北にこの国の首都があり、中央に教皇庁があり、プラハヤデは南側にあるらしい。
そしてここはそこまで大きな国じゃないようだ。
せいぜい、群馬県程度っぽいな。
この国の名前は……グンマァ国!?
っち、奇妙な因縁を感じるぜ。
〖あ、あの……〗
【何だよ】
〖貴方、とても賢いですね〗
【偏差値は低いぞ】
〖え? へんさちって何ですか?〗
【いや、何でも無い】
〖……〗
スライムは俺を見てじーっと考えている。何を考えているんだろう。命乞いかな?
聞いてやらないけど。
【お前らスライム軍もドラゴン軍も撤退を得意としている。そしてその上で確実に魔王軍本体が首都を落として、教皇軍がプラハヤデか教皇庁を護ろうとしたとしてどちらかは確実に落とすってことか】
〖はい。その通りです〗
スライムはどこか落ち着いていた。先ほどまでの動揺はない。
【なぜ魔王軍は俺達人間を狙う?】
〖怖いからですね〗
【怖い? 魔物の方が強そうだが】
〖……貴方達は多いし、偶に天才が出てくる。それが怖いんですよ〗
【……】
〖知性ある存在は、ドラゴンより脅威。魔王様はそう結論づけたんです〗
成る程な。俺は頷く。
あ、これ配信してたわ。
コメントを確認、っと。
――――――――――――――――
ペペロン:魔王軍氏ね
スパゲ:スライム、くたばれ
イカス:ふざけんな
インス:地獄に落ちろ
カルボ:魔王軍は全員○ね
――――――――――――――――
……そりゃ、怒るよな。
俺はスマホから目を外し、スライムの方を向いた。
【なぁ、お前ら魔王軍は人間に対してこういうことしてきたの、初めてじゃないよな?】
〖はい。魔王軍は今まで人間をこの十年で三千万人ほど殺しました〗
【……】
かなりいるな。ホロコーストの五倍。独ソ戦くらい、ってとこか。
【なんでそんなに殺したんだ?】
〖違う存在が、気持ち悪かったから〗
うねうねと動く緑色の魔物。俺にはそいつの言葉が、悪魔の言葉にしか感じられなかった。
魔物を嫌う人の気持ちがよく分かる。
俺も人間だ。
こいつらは、生かしてちゃだめなんだ。
こいつを始末しよう。
と思ったら、母達がやってきた。
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