第22話 スライムキング、転生勇者にびびりまくる

 母とパピルとブレイブは見事にスライムキングの下敷きになってしまった。


【魔力感知】


 俺がスキルを発動し、スライムキングの真下を探る。

 すると、全員生きてることが分かった。

 よし。『強化防壁』はしっかりと発動しているようだ。


〖ぐぬ? 何だ、この……嫌ーな感じは〗


 スライムキングは直径一キロ以上はあるだろう大質量だ。

 俺はそのすぐ近くにいるが、偶々攻撃を食らわなかった。

 普通の人なら逃げるだろう。

 しかし、俺には他の人よりも上の『強化防壁』と配信をしたいという欲望がある。


 俺は、スマホを持ってよちよちと歩き始めた。

 っく。

 二足歩行がこれほど辛いとは。


〖!?〗


 あ、スライムキングがこちらを向いた。

 気が付かれてしまったらしい。

 このキュートな身体なら、あいつは俺の中身が勇者とか分からないだろうな。


〖な、何だ貴様……その馬鹿げた魔力と知性は〗


 スライムキングが戦慄している。

 よく見れば、スライムキングには顔が浮かんでいて表情が見えた。

 どう考えても、それは恐怖に染まった顔だった。


【よう、スライムキング】


〖ひっ!〗


 スライムキングはガタガタと震えだした。


〖何だよ、貴様……魔王様より上の魔力濃度、魔力量……貴様、本当に人間か?〗


 俺はスマホを確認した。

 コメント欄は大草原だった。


――――――――――――――

ペペロン:何で魔王軍幹部がびびってんだよwwwww

カルボ:教皇でさえスライムキングと同じくらいだろwwwww

イカス:配信者ヤバwwwwwww

モブデス:wwwwwwwww

――――――――――――――


 どうやら、皆楽しんでくれてるらしい。

 これは配信者として何よりである。

 よし。

 じゃあ、スライムキングをぶっ潰すとしますか。


 俺はスライムキングを睨む。


【おい、お前】


〖ひ、ひぃ!〗


 スライム達でさえ怯えなかったのに、なぜ逆にスライムキングが怯えるというのか?


【なぜ俺を恐れる?】


〖だ、だって吾輩には分かる。貴様の持つ保有魔力量と、その質が。恐れぬ訳がない!〗


【ならなぜお前の武形は俺を恐れなかったんだ?】


〖か、簡単である! 一般のスライム達は……そこまで魔力感知能力が高くないからである!〗


 スライムキングは俺を凝視し、まだ動揺が収まらないようだ。


 成る程。ということはスライムキングは魔力感知ができるからこそ、俺の強さを感じ恐れたのか。

 これはまずいのか、好都合か分からないな。

 配信にプラスになるか、どうか。

 俺が絶対に勝つと思われたら配信から緊迫感が消える。それが視聴者に受けないなあらピンチの振りを演出しないといけなくなるだろうし。


 俺はチラリとスマホを確認する。


――――――――――――――――

ペペロン;配信者、sugeeeeeeeee!

イカス:マジでこの世界を救う勇者かなんかかよwwww

ツウィト:魔王軍幹部に恐れられるとか化け物だろww

モブデス:もう、魔王軍のやらせでも驚かないwww

インス:この配信に出会えて良かった。希望だわwww

――――――――――――――――


 ふむ。悪く受け止められてはいないらしいな。

 ならポジティブに受け止めるとしよう。

 俺が強い、というのはこの世界では都合がいいらしい。 


 と思ったところで――母、パピル、ブレイブの三人がぼこっとスライムキングの身体の脇部分を突き破って出てきた。

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