第17話 母と少女に、スライムを殴って貰いました

 次は母だ。


【母さん、スライム殴って下さい】


「ユシアちゃん、母親をこき使うべきじゃないわ」


【大丈夫です。僕がスキルで護っているので】


「……そのようね」


 母はじっとスライムの死骸を見ている。

 そして、様になっている感じで拳を構えた。まるでボクサーのような格好だ。


――――――――――――

ペペロン:この人見たことある

スパゲ:あれ、この人……冒険者セレスでしょ

イカス:セレスって美人冒険者で有名なあのセレス!?

ショケン:確か、B級上位になってから引退したんだよな

――――――――――――


 え、母……B級の冒険者だったの?


 母は構えたまま、軽いフットワークで複数のスライムに殴りかかった。

 スライムの魔力は『一撃必殺』の加護のお陰で一撃で飛散する。

 スライムの体は崩れ落ち、体は煙になって消えて行く。


――――――――――――

ペペロン:間違いない! これって、炎拳流の戦い方だよ!

スパゲ:ガチでセレスじゃん

イカス:生セレスとか神配信かよ

ショケン:綺麗

――――――――――――


 母の戦う様は確かに美しかった。

 俺はスマホのコメントをチェックしながらスライム達を圧倒する母の姿に胸を打たれる。

 これが、俺の母か。なんと綺麗なのだろう。

 流麗なフットワークは避ける必要も無いのにスライムの攻撃を華麗に躱し、的確な体捌きを行っている。

 スライムが複数匹で母を囲んでも、お構いなしに母は優雅に拳を叩き込んでいく。


 一分と経たず、スライムが十匹以上倒された。

 母は倒す度、スライムの体から出てきた光る石を回収していった。

 ……拾うということは、回収する必要があるのか。あるいは、価値があるものなんだろうな。


 よし、母はこれでいいだろう。

 次はパピルだ。


【パピル。スライムを倒してくれ】


「あたしみたいなか弱い女の子にそんなこと言うの、君だけだよ」


 パピルはムッとした顔で俺を睨んでくる。

 どうやら嫌がっているようだ。


【でも、加護してるから傷つかないよ】


「そんなこと言われてもなぁ」


【頼むよ。配信して数字取りたいんだ】


「き、君はこれを不特定多数の人に発信してるの!?」


 パピルは本気で驚いたようで、目を大きく開いている。

 ……配信のことは事前にアポとるべきだったな。


【うん】


「し、信じられないよ。やっちゃだめだよ……って、若いから分からないのかな?」


 パピルのような高校生程度だろう年齢の奴に言われるとムカつく。でも、俺は今0歳児だ。パピルのが年上なんだよな。


【お願い、パピルお姉ちゃん。スライムを殴ってよ】


「い、嫌だよ。どろっとしてて気持ち悪いもん」


【でも僕、命助けたよね?】


「!?」


 パピルは面食らったようだ。俺は思わずニヤリとした。


【命の恩を助けると思って】


「う、う~ん」


【お願い】


「こ、今回だけなんだからね。……うわあああああん!」


 パピルは泣きながらスライムに突撃した。


 俺はスマホでそれを撮影しながら、コメント欄を確認。


――――――――――――――

ペペロン:今度は女の子かよ

スパゲ:オッサンとセレスは分かるけど、か弱い女の子がスライムを倒すなんて無理

イカス:いける気がする

ショケン:明らかに素人の動き。これじゃ最弱の魔物さえ倒せないよ

――――――――――――――


 倒せない、と思ってるようだ。

 ……まぁ、倒せるんだけどな。


 パピルは一撃でスライムを粉砕した。俺はすかさずスマホをチェックする。


――――――――――――――

ペペロン:何でもありかよwwwwwwwww

スパゲ:スライムって、強いはずだよな?

イカス:C級冒険者チームで挑むのが普通だよ

ショケン:草

モブデス:神配信、まさかまた観れるとはww

ツウィト:相変わらずやべえええwwwwww

――――――――――――――


 他の人のコメントもどんどん上がってきてる。観れば登録者数は990人になっていた。どうやら盛り上がってくれてるようだ。

 くくく。夢の千人まであと少し!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る