第14話 瀟洒な街は、地獄絵図になっていた。

 母と本屋女子と、本屋女子に抱かれた俺は本屋の外に出た。


 ドアを開くと、そこは地獄絵図だった。

 街のあらゆる家屋が炎上し、人々は逃げ惑っている。

 許しがたいのは、子供が捕食されていることだ。

 スライムはぱっと見でも千体はいた。


 しかも、遠くの方でも火の手が上がってるとこを考えると、スライムは一万体以上はいるだろう。

 ……俺も戦うしかないな。


 俺がふと遠くの方を見ると、スライムが人間を捕食している。

 緑色の二~三メートルの化け物共は、まるで芋虫が草をはむはむと食べるように人間を食べていく。

 スライムは雑魚だと思っていたが、悍ましい。

 ゼリー状の透けた体は複数人を食ったことが分かる。


 俺の中に、夥しいほどの怒りが出てきた。


「そ、そんな、なんてこと……」


 母が掠れ声で泣くように言う。いや、泣いている。母の目からはぼろぼろと涙が出ている。


「ま、『魔力感知』!」


 母は詠唱をした。あれを唱えると、確か敵の位置や数を理解できるんだったな。


「ばぶばぶ」


「……」


 俺が話しかけても母は答えてくれない。

 ……無理もない。この地獄絵図だ。

 そこかしこから悲鳴が聞こえる。

 ここで戦わないと、男じゃねえ。


 一匹残らず、スライムを駆逐してやる。


 ちなみに、俺を抱いているのは、本屋女子だ。

 本屋女子は俺を抱きながら母の肩に手を当て、ゆさゆさと振った。


「セレスさん、どうしたんですか!?」


「化け物がいる……」


「化け物?」


「スライムキングが来ているのよ! 魔王軍の大幹部がね!」


 ……成る程。

 斥候部隊とは聞いていたが、本格的に攻めているらしい。

 俺が見たとこ、軍隊らしい軍隊がそこまでいない。

 その割りには文化面で豊かな食料や建築物に溢れている。

 プラハヤデは狙われたのだな、運の悪いことに。


 だが、魔物達(あいつら)にも計算外はある。

 この俺の存在だ。


 俺は自分のスマホに魔力を込めて、詠唱を開始した。


【殺試合(デスゲーム)、開始】


 スマホはどす黒い魔力を帯びて、先ほどとはまるで違う巨大な天蓋を設置した。

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