第11話 転生勇者はスライム達相手に大勝利

『一撃必殺』と『狂化』の付与は大正解だった。スライム達は即座に殺し合ってくれる。

 スライム達はただでさえ通常の人間より強力なモンスターだろう。

 実際に目の当たりにして分かる。

 人間に襲われるに値する二~三メートルの体と緑色のどろっとした粘体質は不気味だ。

 こいつらに襲われるとか恐怖でしかない。

 さっさと駆逐するに限る。


 スライム達は十匹ほどいたが、今やもう二三匹しかいない。

 ……一分も保たなかったな。


 俺はスマホを確認した。


――――――――――――――――――――

モブデス:スライムに仲間殺されたからスカッとするwwwww

ツウィト:このチャンネルやべええwwwwwww

スカイピ:凄いチャンネルを見つけてしまった

――――――――――――――――――――


 俺の登録者は十人に増えている。

 配信は初回としてはまずまずの成功だろう。

 続けて行けば登録者が増えるかもしれない。

 それはそれとして、俺は失敗を感じた。


 時間だ。


 一分で討伐は短すぎる。

『一撃必殺』を付与したのは大正解……と思いきや、これは配信者としては失敗だな。

 せめて十分か一時間くらいの動画にするべきだろう。

 LIVEだけど、デスゲームが売りだからな。

 これじゃショート動画撮ってるみたいだ。


 俺は配信業で食って行きたい。

 このアプリにもロイヤリティはあるのなら、俺はそれなりの長さの動画を出して食っていかないといけない。


「びっばい、ばば」


 失敗、だな。

 俺はスマホから目を外し、最後に残った一匹のスライムを睨む。


〘タ、助ケテ……〙


 今回のデスゲームで【一匹だけ助けてやる】と言ったからだろう。効果が切れている。

 よし、今回はこれで終わりにするか。

 ……近いうちにまた、配信できるといいな。


 俺はふと、俺の母や何人かの店員や母を助けてくれようとしたおっさんが傷ついているのに気付く。


 俺は彼等を指差し、呪文を詠唱した。


【ほのぼの炎】


 ぼおっと炎が彼等を包み込む。

 俺は内心、ひやひやしたものの炎のベールが解かれたら母達の体から傷が消えたり変な方向にねじ曲がった体が元に戻っていた。


 よしよし。

 おっと。

 一応、今のうちにやっておくか。


【コピーアンドペースト】


 俺が前世考えた呪文だ。

 この呪文は対象の物体を実際にコピーしてしまうという優れたスキルである。

 これを使って俺はスマホを一台複製した。


 よし、これで俺専用のスマホが出来た。

 俺が魔物に襲われても【殺試合(デスゲーム)】で今後撃退が可能になる。

 父が魔王軍と戦ってるなら助けに行くことにもできるだろう。


 スライムは、っと。


 俺が視線をスライムに映すと、スライムはぶるぶるガタガタと震えていた。

 約束は守ってやらないとな。


【殺試合(デスゲーム)、終了】


 俺がそう言うと、小さな天蓋や十三本の支柱、天蓋と地に描かれた二つの魔法陣が消えていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る