5: 懐かしの我が家

いつのまにか

蜜蜂が帰ってこないので

養蜂業がいくつも閉鎖してるらしい

蜂蜜は菜食主義者が食べるのかと問う前に

滋養豊かで貴重な食品になりつつある


川が汚れているので

鮭の産卵が少なくなっている

それとも帰巣本能が狂ってしまったのか


伴侶や子を持ったはいいが

人を寄せつけない孤高の精神を持った母は

きっと病気


若いころはまともだったのに

年をとるたび性格がきつくなって 気がおかしくなって

そのうち孤独死するだろう


退職後に再婚した父は 痴呆症になった

後妻は介護と宗教に生きがいを見出し

部下は後妻だけになったが父は満足で あとは死を待つばかり


子どもたちは一種異様な生活を察知した

ふたりとも顔を出したことがないが

ここの空気を吸いたくないと思ったことだけは確か


ひとりじゃ死にたくない

ひとりじゃ死にたくない

生きぎたなくあらがいつづける

そこは

死の家の臭いがする


巣は空っぽのまま

墓参りに来る人もない


元の荒れ地となった

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