4: テラリウム
われわれはみな
沈む船の乗員です
かれらはわれわれの不平がわからない
われわれはかれらの目的がわからない
もしかしたら目的はないのかもしれない
目的なしで沈んでいく船のなかに われわれはいます
われわれはずっと知らなかったある事実について
うすうす気づきはじめました
かれらには慈悲がありません
われわれはかれらの答えを拒めません
針を探しなさい
嘘を探しなさい
紙で作った真実は燃やされます
それがかれらの答えなのです
「わたしたちは団結している」と
かれらは断言するが
実は孤立していました
「わたしたちがしたことをよくわかってる」と
かれらは断言するが
自明なことがらを断言するのでしょうか
「わたしたちはしくじっていない」
かれらは確実にしくじりました とりもどしのつかないようなことを
「わたしたちはわたしたちがいるところに不満だらけである」と
かれらは断言するが
われわれが空のこと星のことをいっているあいだ
ずっとごちそうを楽しんでいました
われわれはごちそうの残りをあさりながら
嘘を見破るのが得意になってしまいました
有能 有能 有能
あるいは賞賛
崇拝 崇拝 崇拝
おぼれる
ちからがはいらなくなる
つめたくなる
ねむくなる
太陽を掴まえた
むかし見た景色がまた見える
それは幻影かもしれません
あのひとたちは
繰り返しを期待するといいます
爭いの繰り返しは
にんげんが卑怯で卑劣になるということを
にやついたひとたちは充分知っています
われわれの船が傾いてコントロールできなくなるのを
あのひとたちはまるで見世物のように面白おかしく
にやにやしているのです 「ばかだね」と冷たくいいながら
助けてなどくれません
笑って ただ見ているのです
いや
おぼれるわれわれの足を引っ張るのです
あのひとたちのもとへ連れていこうとたくらんでいるのです
奈落の底へ落とされるわれわれはみな目をつぶり
われわれが潰されて消えてなくなるのを目撃したいというあのひとたちの目は爛々と光っていました
やがてみな沈黙する
かつては
おびただしい数の人々が暮らしていた船
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