〜私はあいつに〜

急に、この子…いや、こいつの声が低くなったと思ったら、甲高い声になった。


「お前だな。なんでこんなところにいるんだ?お前は夢にしかいないはずなのに。」


「ほう。私について、知らぬ内に学んでいたのだな。正確に言い表すとすれば、この女児の肉体を、われの依代にし、現実世界に存在しているのだがな。…そして、私からも質問がある。…舜太よ、我の名はわかるか?」


…その答えは…もちろんこれだ。


「答えはイエス。存在を当たり前にって、現実のような夢を見せたんだな。」


ということは、この世界は、こいつが姿を見せた瞬間、偽りの世界へ変貌した、ということだろう。


「…で、その契約書になんの意味が?」


答えは悪魔的だろうか。こいつの存在自体、悪魔なのかももわからない。


「良いところに目をつけたな、舜太。これは…ここに書いてあるもので全てとしか言えんな。」


書いてあるものが答えだと言われても、紙1枚しかなく、契約書としか書かれていない。


「このとおり、ただの契約書だ。どうもこうもない。契約をする時、そういう紙を使うほうが雰囲気が出るであろう?」


こっちは、そんな雰囲気を楽しめる余裕は無いのだが…。これ以上この契約書について聞けば、次は人間のマネだの何だの言われそうだ。私は、その場からどうすることもできず立ち往生していた。


「…お前は我の名前を覚えているそうだな。それはもう、契約成立の合図。今度こそ、またはないお別れの時。」


私は、その言葉を聞いた瞬間、勝手に体が動き、ペンを握った。

私はこの契約書にサインをする気は無いのに。


これも、こいつの力なのだろうか。そんなの、チートではないか。


「…我を救ってくれ…。永遠の漆黒から、我を………」


そんな言葉を聞いた途端、私の抵抗も虚しく、

その契約書に、ペンを走らせていた。




……。意識が朦朧とする。ここは…?


「起きたか。舜太。ようこそ。

永遠とわの暗闇と、ものだらけの夢の中の世界へ。

今から汝が、永遠の漆黒を担いしぬしとなる。

不変を望むはずの汝は、変化を望んだ。成長として喜ぶか、変化を受け入れたことを悔やむか…。それは、舜太、お前が考えることだ。

闇を、混沌を、永続させろ……漆黒に光が指す時、お主も救われよう…

…さらばだ、❏⊿◎よ…」














……みるみるうちにあいつは消え、私の体は漆黒に染まっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る