〜終わりゆく夢〜
私はしばらく『あいつ』と見つめ合った。
しかし、私は殺されることはなく、逆に邪悪なオーラが減っていった。
いま怒りの沸点が低いのかもしれない。
それか、『あいつ』を襲わなかったからか?
しかしそれらもラッキーと思い、考えることを放棄した。
見つめ合っていると、こんな事を言ってきた。
「人間よ。お主の名は何という。」
本当に急だった。私は、反射的に自己紹介した。
「俺は、鬼流舜太。38歳だ。」
すると、やっと俺が言った質問に対して答えてくれた。
「そうか。舜太よ。さっきの質問だが、ここに来るための条件は、平凡に飽き、何かしらの変化を求めているもの、そして悪魔の存在を認識していることだ。その代わり……私という……異形をみることに‥なる。だから、ここに来る人間は、数少ないのだ。そのため、私の夢にたどり着いたお前を嬉しく思う。時間が早く過ぎ去ってもだ。」
そうだ!ここは夢の中だが現実の時間は進んでいる。
時間という単語から、私はそう思い、テンパった。
「あのさ、今の現実の時間ってわかるか?」
私は、体内時計だともうやばい時間だ。
「今は、4時30分だ。お前は6時出勤のはずだから、5時までには必ず現実に返す。」
良かった。良くはないが、それまでは、この変化を楽しむとしよう。
…なんであいつは俺の出勤時間を知っているんだ…?
それはさておき、今気づいたことだが、暗闇だった空間が、明るくなっている。
しかし、怪物は、暗闇に隠れて姿を見せなかった。
変なオーラのせいで見えないようにも見えたが、それは考えないようにした。
…そして、あっという間に30分がすぎた。
二度と来れないこの空間で、アイツと思う存分話し、ついに、時間がやってきたのだ。
私の感覚だと、たったの5分しかたって無いように感じた。
「…舜太よ。もう5時になる。最初で最後のお別れだ。」
この時が来ることは分かっていたが、何故か無性に寂しく感じた。
「ああ。最後だな。お前も割と良いやつだったし、もう会えないと寂しいが、親近感がほしいな。だから、またな。❏◎⊿。」
その言葉を最後に、私の視界は白い光に包まれた。
その時の『あいつ』は、何故か、ニヤリと笑っていたように見えた。
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