第5話

案の定帰宅したら両親にくっそ怒られた。なんせ朝になるまで外にいて、おまけに傷だらけで帰ってきたからだ。まあ親の心配していてくれた気持ちが痛いほど分かったので一通り説教が終わったら部屋に戻り学校へ行く準備をし始める。すると

「主の両親は優しいのじゃな。」

「まあ、そうだな。」

少し照れくさいが否定はできない。てか学校行ったらまたあの男どもに絡まれるのか。

「めんどくせえ、、、、」

そんなことを口にしても状況は変わらないのでさっさと支度を終わらせようと制服に着替えて一階のリビングに降りていくのだった。



うちの学校はそれなりにでかい高校でとにかく人がめちゃくちゃ多い。部活動も活発だし行事も毎回盛り上がっているらしい。だが生憎俺自身はいじめっ子に因縁をつけられて満足に青春を謳歌できないわけだが。俺だって高校でいい思い出つくりたいのに!

「そんな悲惨な顔をするな主よ。」

「うるさい。てゆうかなんでついてきてるんだよ。」

実際すごい気が散る。

「妾は主の近くでないと動けんからな。」

「それは、、、しょうがないのか。」

がっくりと肩を落としながら教室へと足を運ぶ。実際今のところ危害を加えてくる様子はない。しかも裏山の寂れた神社にずっといたわけだから少し可哀想な感じが、、

「くくっ、主は優しいんじゃな。」

「黙れ。」

小馬鹿にするように言われる。やっぱり1ミリも可哀想と思わない。そう毒を吐きながら席に着く。あいつらは、まだ来ていない。今日もパシリとして扱われ暴力を振るわれるのだと思うと気分が落ち込む。だがいつまでも落ち込んでいるわけにもいけない。やられてばっかりじゃ性に合わない何か今の現状を変える何かが必要だ。自らの輝かしい高校生活に思いを馳せいじめっ子どもが来るのを待っていたのだが────




「全ッッッッッッ然こねえじゃん。」

かなり身構えていたのだが昼飯時になったていうのに誰一人としてこない。別に来てほしいわけじゃないんだが割と覚悟を決めて待っていたのになんだか拍子抜けだ。なんだか気が抜けて腹まで減ってきた。

「とりあえず飯でも食べるか。」

食べている途中に来られても困るので屋上に続く階段を上がる。屋上の扉を少し開けて誰もいないことを確認し、外に出る。屋上はクラスであまり居場所がない俺にとっては最高の場所だった。

 素晴らしい晴天!

 風が直接来る解放感!

 そして俺一人だけしかいないという特別感!

やはりここは昼飯を食べるには最適だ。そう馬鹿な事を思いながら朝自分で作った弁当を口に運ぶ。若干薄い。景色を眺めている途中浮いている少女チヨメが目につく。いま思えば昨日は不思議なことばかりだった。チヨメっていうやつが俺の中に入ってくるし、『妖気』だかなんだかみたいな胡散臭いラノベのファンタジーっぽい設定を教えられたり、そしてなにより気になるのは、、

「昨日の変な声ってなんだったんだろうなあ。」

昨日さくじつ主に呼び掛けて身体を借りたのは妾じゃぞ。」

「────えっ?」

マジで?

「事実じゃ。」

嘘だろおい。だったら昨日俺が謎の声に言った言葉は、、

「とぉっても必死で愛いものだったぞ?」

本当に恥ずかしい。できるならこの場から消え去たい。あんな言葉なんて言わなきゃよかったしチヨメはずっとこっちを見てニヤニヤしていやがる。流石に格好がつかない。一刻も早くこの場から逃げ出したかったので羞恥心によって味のしない飯を腹に詰めて足早に教室に戻った。


「やっぱりまだ来ないな。」

下校の時刻になっても一人も来なかった。もしかしたら今日俺は何事もなく楽しいまま一日を過ごせるかもしれない(昼飯の時を抜いて)。そう思いながら意気揚々と足を家へと運ぼうとしたが──────


「おいお前、こっちこい。」

そう聞き覚えのある今すぐにでも殴りかかってきそうなくらい怒っている奴が一人俺の胸倉を掴んでくる。、、、やっぱり今日は最悪な日になりそうだ。頭でぼんやりと考えながら引きずられていくのだった────────────



連れてこられたのは校舎裏。まさにいじめをするには完璧な場所だ。恐る恐る周りを見渡すといつもの奴らの他に見慣れない一際ガタイがよくて身長が高いヤンキーみたいな奴が数人いる。

「昨日はよくもやってくれたなあ、今どうせ調子乗っているお前にちょっとだけをしてもらえるセンパイにきてもらったんだよ!」

「なんだ結局他人の助けがねえとまともに喧嘩もできねえのかよ。」

そう呟くと

「うるせえんだよ!!てめえは大人しく俺たちに殴られてればいいんだよ!口答えすんじゃねえ!」

うるさい怒号と共に蹴りが脇腹辺りに直撃する。少し嗚咽を出しながらもしっかり睨み続ける。

「センパイもうしちゃってくださいよ!」

指の骨が鳴る音がする。やはり俺はこうなってしまうのか。

「おい!主よ聞こえるか。」

いつの間にか隣にいるチヨメに話しかけられる。

「少々厄介なことになっておる。はよう立ちあがれ!」

「何が厄介だよ。昨日もこうだっただろ。」

不貞腐れたように言う。

「そうではない!前を向け!」

いきなり大声を出されて驚き咄嗟に周りを見渡し上級生に目が留まる。首が通常の人間が到底曲げれないくらい角度がついている。いや正確にいうと首の辺りが割れて得体の知れない黒いが出て首が正常に機能していない。

「センパイどうしたんすか返事してくださ、、、、、、、ヒッ!」

奴らの一人が異変に気付き驚いた声を上げる。さらに首が上下左右に揺れ動き黒い靄が溢れ出している。ほかの奴らもそれをみて恐れおののく。目が離れない。足がすくむ。今までで見た何よりも悪寒がする気色悪さを放っている。靄が一本の木ぐらいの大きさになっていく。だんだん色が濃くなりどろどろのゼリーのような形状になって上級生の身体を容易く飲み込む。そしてしまいには黒いに気持ち悪い目玉が出てきてこちら覗き込んでくる。

「主よ、よく聞け。今から対峙するのは人を殺すくらい他愛もないようなやつじゃ。心して注意しろ!」

「そうは言ってもさぁ!」



あんなのどうすればいいんだよーーー!!!

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