公園の銅像

@harunohinohara

第1話

 いつもにこにこしているのがお前さんの美点だと大学を出て占い師と建設現場の監督を兼任する生活をしている先輩に言われた。冗談じゃない。別に楽しくてにこにこしているわけではなく、目の前に出てきたもろもろを有耶無耶にやりすごしているうちそうなるのが習慣づいただけである。そもそも人間の生のエネルギーは闘争本能なのだが、自分にはこれが致命的に欠けており今日も自分との戦いに敗れ昼からの講義へ行きそびれた、そのだらしなさの象徴がこのへらへらと気の抜けた顔である。


そういうゆえんで私は自分の表情を憎みたいのだが、鏡でこの締まりのない顔を眺めているとわが顔ながら気が抜けてきてなにもかもがどうでもいいような気分になってきてああそういえば今日は床屋に行こうと思っていたのにもう日が西に傾いている。


 どうやら1日を無為に終えようとしているらしいという焦燥から逃れるようにようやく動かざること山のごとき腰を上げて東へと向かう電車に乗り込んだ。


 電車を降りて夜中の公園に入ると、禍々しい照明を当てられた宗教家の銅像が現れる。狂気に満ち満ちた表情で立ちはだかるその銅像を見ていると、なぜだか私はいつもゲラゲラ笑いだしたくなる。あれくらいの勢いで生きてみたいとも思ったし、ああなってはいよいよおしまいだとも思った。

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