第45話 ユーノスの策略
「も、申し上げます!!城門が破壊されました!!」
騎士の報告に動揺が走る一同。
「何を馬鹿なことを!!いい加減なことを言っておると許さんぞ貴様!!」
小太りの男が顔を真っ赤にして騎士を怒鳴りつける。
「い、いえ、私もそういう連絡を受けただけでして……」
騎士もその剣幕にしどろもどろになる。
「ここで騒いでおっても仕方あるまい。誰か直接調べて参れ」
ユーノスがめんどくさそうに命令を出す。
「おそらくは国王派の連中の仕業であろう。騒ぎを起こした者を直ちに捕まえるように。これは厳命である」
ユーノスも城門が破壊されたとは考えていなかった。
王都の周囲は自ら率いてきた軍勢が待機してある。
それを突破して城門を壊すとなると、大規模な部隊の攻撃でも無ければ不可能だろう。
その接近を気付かずに許したとは考えられない。
――ふん、今更くだらぬ抵抗をするものだ。
――幽閉などと甘いことは言わずに何人か見せしめに処刑も考えるべきだな。
この騒ぎの犯人はもちろんだが、それ以外の処刑の対象を考えだした。
「失礼しますよ」
そんなユーノスの考えを遮ったのは、よく通る男の声。
いつの間にかおかしな恰好の男が部屋の扉の所に立っていた。
不思議なのはその男がどうやって、閉まっていた扉から入ってきたのか。
男の声に警備の騎士たちが一斉に刀を抜くが、男はまるで怯む様子はない。
「何者だ……」
ユーノスは最大限に警戒をしつつ男に話しかける。
「大叔父様、私です」
男の後ろからユーノスの見知った少年――ロットが顔を覗かせる。
「ロットスター……何故お前がここにいる?その男は誰だ?」
ユーノスの威圧するような声に反射的に顔を伏せる。
「……この方はシン様です……この国の救世主です」
「いや、救世主じゃないし」
シンが速攻否定する。
「ほう――救世主とは大きく出たな」
ミス!シンの言葉はユーノスに届かない。
「お前を連れてこの場に居るのだ。只者では無いのは間違いないが、とても国を救えるほどの大物とは思えんがな」
ユーノスは値踏みするような視線でシンを見る。
その間も騎士たちはジリジリと二人との距離を詰めてくる。
「では、そいつが何をしてくれるというのだ?どうやって沈みかけたこの国を救うというのだ?まさか、この間降った雨をそいつが降らしたなどと言うのではないだろうな」
ここまで無表情だったユーノスは、初めてうっすらと嘲るような笑みを浮かべた。
「……そうです」
「あ?」
「シン様が降らせてくださいました!この国は救われるのです!!」
シンの後ろに隠れていなければ立派だったのだが。
「ふ、ふふ――ふはははははは!!只者では無いと思っていたが、まさかペテン師だったとはな!!そうか、お前の父親はそいつに騙されてノコノコと戦場に出ていったのか!やはり、貴様らがこの国を腐らせていたのだ!無能な王が治めていることが民にとってどれほど不幸なことか!これからは私がこの国を治める!ファーディナントと共に大陸を支配する強国へと生まれ変わるのだ!!」
側近でさえ、ユーノスがここまで感情を表に出したのを見たことがなかった。
「ファーディナント…と?それはどういうことですか?」
何故ここでその名前が出てくるのか?
ロットを感じたことの無い不安が襲う。
「今回の戦争は最初から仕組まれてたってことだ」
シンがその疑問に答える。
「ほう、流石にペテン師。多少は知恵が回るようだな」
それは本当に感心しているようだった。
「ダミスターが来るまでの暇つぶしにお前の考えを聞いてやってもいいぞ?」
「シン様は知っておられたのですか!?」
シンはここで話す気は無かったのだが、どうもそうはいかない空気になっていた。
「――この戦争を勧めたのはあんたなんだろ?その話を聞いた時は、そういう手段を取らないといけない程に追い詰められているんだな、くらいにしか思わなかった」
「そうだ、この国を立て直すには、他国から奪うしか道は無い」
「しかし、このタイミングであんたは反乱を起こした。ファーディナント侵略が成功していないにも関わらずだ。そんなどん底の国の王になってどうする?そんなのは国が亡ぶのを加速させるだけだろう」
「そのとおりだ」
ユーノスの表情はどこか楽しそうに見える。
「もし自分ならどうするかと考えた時、一番手っ取り早いのは近隣の大国と手を結ぶことだ。それが可能なら、侵略を仕掛けることなく国を救うことが出来る。だが、この国にはそれだけの交渉材料がない。しかも、隣の大国のファーディナントとは仲が悪いときた」
「では、どうする?」
「敵対してるからこそ出来る交渉もあるんじゃないのか?」
その言葉にニヤリとするユーノス。
「あんた――ファーディナントにこの国を売ったな?」
「見事だ!!」
我が意を得たりとばかりに手を叩くユーノスだった。
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