戦力を増やして大部屋に再挑戦
歓迎会の翌日、朝の間はユウ、ケネス、ジュードの3人で武器の手入れのために冒険者ギルド城外支所の打合せ室にこもった。
長らく
一方、ジュードも自分の道具で
「その剣、見た目は何ともなさそうだけどそれでも研いじゃうの?」
「切れ味は常に最高の状態にしておくものなんだよ。斧みたいに重量で叩き潰すわけじゃないからな」
「なるほど、だからケネスはあれでいいんだね」
「いやそうじゃない。ケネス、お前は何をやっているんだ。もっと刃の部分をしっかりと研げ。それじゃ撫でてるだけじゃないか」
「えー、このくらいでいいだろ。どうせ潰れるんだし」
「ただでさえ手入れを頻繁にしないのに、その手入れでもいい加減なことをしてたらダメだろう。いくら
「へーへー」
主にジュードが指導する形でケネスの手入れが進められた。ユウも都度助言をしてもらって自分の剣を磨く。ついでに革の鎧の状態も確認し、服も傷んでいるところを直した。
そうして四の刻の鐘が鳴る頃にはすべての手入れが終わる。ついでに昼食である干し肉も食べ終わっているので後は出発するだけだ。
すべての荷物を背負うとケネスを先頭に打合せ室から出ていく。目指すは
「やっと大部屋に再挑戦か。腕が鳴るねぇ!」
「このメンバーなら前よりも安心して戦えるだろう」
「
「ユウもそうか。20匹以上を4人で捌ききれるかが鍵だな」
雑談を交わしながら冒険者の道を北に進むと門を潜った先に
「ハリソン、そっちは充分休めたか?」
「ゆっくり眠れたから完璧だ。そっちの手入れはどうなんだ? ケネスの
「当然完璧だぜ! 見ろよこの刃先! きれいなもんだろう」
突き出された
ユウたち4人は合流すると
3枚目の地図の端にある大部屋の扉にたどり着くとユウが地図を腰の麻袋にしまった。代わりに
全員が隊形を整えるとケネスが扉に手をかけた。そのまま背後の3人に声をかける。
「今度は楽勝で片付けようぜ! そんで、さっさと
そのケネスのかけ声にユウたちも元気に応えた。気を良くしたケネスが勢いよく扉を開けて大部屋に入る。
今回の大部屋は
「はっはぁ! 死ぃねぇ!」
最初に接敵したのはケネスだった。手にした
そのケネスの左側を固めているのがジュードだ。いつものように
今回はパーティのほぼ真後ろで戦うことになったハリソンは最初の1匹こそ倒したが、その後は
一方、ケネスの右側を支えているのがユウだ。最初に向かってきた
「あああ!」
「ギギャッ!」
3匹目の
戦いの序盤で半数近くの魔物を倒したユウたち4人はその後残りもすぐに討ち取る。前の苦戦が嘘のような快勝だ。
魔石と出現品を拾い集めた4人は大部屋の真ん中に集まった。笑顔のケネスが最初に口を開く。
「もうちょい手こずるかと思ったが楽勝だったな! やっぱり武器の手入れは大事ってことか? いつもより切れ味が良かったぜ!」
「武器の手入れはいつもやるものだ。それより、各個人がちゃんと戦えて、更に連係できるようになったのが大きい。ハリソンなんかは自分の役割をしっかり果たせていたぞ」
「粘れば何とかなると思えるのは楽でいい。そうでなかったらただのじり貧だからな。やっぱり主戦力がしっかり敵を倒してくれるのは戦っていて安心できる」
ジュードだけでなくハリソンも笑顔を浮かべていた。このパーティに確かな手応えを感じているようだ。
そんな仲間の様子を見ていたケネスが嬉しそうにうなずく。
「やっぱ安心して戦えるってのはいいことだぜ! そういえば、オレが駆けつける前にユウは魔物を倒してたよな。その剣は使えそうなのか?」
「手入れをしたらちゃんと使えるようになったよ。ただ、この様子だと頻繁に手入れをしないとすぐに駄目になりそうだけどね。問題があるとしたらそこかな」
「大した品質じゃなさそうだからな。いっそ店で買っちまうか?」
「どうしようかなって迷っているところなんだ。お店で買うと高いしね」
そう言いながらユウは苦笑いした。かつて臨時パーティを組んでいた新人冒険者と同じことを言っていることに気付いたからだ。代わりの武器はあるので安心して使い潰せるという言い訳はできるが、別れた新人冒険者の気持ちが今はよく理解できた。
そんなユウの内心など知らないケネスは話を続ける。
「その辺は好きにしたらいいさ。で、ここが楽勝ってなると、次は
「そうだね。あそこで充分やっていけるんだったら2階も考えていいんじゃない?」
「へへ、もうあと少しだよな」
「それにしても、ケネスは2階にこだわるね。稼ぐだけなら1階でも充分なのに」
「弱い敵とばっかり戦っててもしょうがねぇからな。やっぱ一仕事したっていう充実感が欲しいんだよ。だから帰って飲む酒が旨いんじゃねぇか」
「なるほどなぁ」
ユウにとってはあまり共感できない感覚だった。安全ならそれに越したことはないというのが基本的な考えだからだ。その割に危険な生業をしているわけだが、生活手段として冒険者をしている者たちはユウと似た考え方をする者が多い。
ともかく、第一関門は突破できたことにユウたち4人は気を良くする。そうして次いで隠し扉の向こう側へと向かい、
室内には20匹以上の
実際に戦ってみてわかったことは1対6は全然余裕がないということだ。囲まれて四方から攻撃されるとさすがに対処できない。
そこでユウたち4人は壁際に寄って戦った。壁を背にしてケネスを中心にジュードとユウがその脇を固める。ハリソンは3人の内側に立って間からすり抜けようとする
こうして何とか大部屋内の魔物をすべて倒すことができたユウたちだったがその表情は暗い。
「やっと終わったかぁ。結構面倒だったぜ」
「
今まで笑顔を浮かべていたケネスも今回ばかりは疲れた表情を浮かべていた。ジュードも口数が少ない。
一方、2階で戦っていた経験のあるハリソンの表情はそれほど変わっていなかった。魔石と出現品を拾いながらしゃべる。
「今回苦戦したのは単純に魔物の数が多かったからだと思う。実力面ではこの4人でも2階でやっていけるとは思うが、メンバーを増やすかもっといい装備を用意するかだろうな」
「ジュード、すぐにメンバーを迎えた方がいいと思うか?」
「いずれはと思ってるが、今しばらくはこの4人のままの方がいいな。まずはこの4人で慣れてからでないと、今まで積み上げたものも崩れかねない」
「となると装備か。盾を使うのが苦手なんだよなぁ、オレ」
渋い顔をしながらケネスが唸った。ちらりとユウを見る。戦力強化のために扱う武器を替えたメンバーがいるのだ。声を大にして文句も言いにくい。
それぞれ自分のできることが何か考えながら
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