大部屋に挑戦
ユウが
以前ユウが作った1階の地図が20枚近くあるので行き先には困らなかった。地図に記載された範囲で魔物を倒し、宝箱を開けていく。
地図に記載された範囲では部屋に
また、宝箱の罠もユウが練習した通りのものだったのでほぼ問題なく解除できた。たまに失敗することがあるものの、その頻度は日に日に下がっている。
こうして順調に
しかし、稼ぐのには都合が良い環境であっても冒険者としての刺激はなさ過ぎた。真っ先に不満を上げたのはケネスである。
「稼ぎはともかく、単調な繰り返しはさすがに飽きてきたぜ」
「さすがに
「そういうものだと割り切ったらいいと思うんだけどな。ケネスもジュードも駄目なの?」
「オレはダメだな。期間限定で耐えるっていうのならともかく、こうも同じことが続いたらさすがにきつい」
この日の活動を終えたユウたち3人が出口に向かって歩く中、ケネスがうんざりとした表情を浮かべた。ジュードも同調している。
2人とは違う意見のユウは小首を傾げた。刺激のある冒険はある程度蓄えを増やせてからだと考えているのであまり共感できないでいる。
「うーん、そうかぁ。まぁでも、このパーティの実力からすると簡単すぎるのは確かかも」
「だろ! だからさ、明日は大部屋に挑戦しようぜ!」
「俺も賛成だ。みんなどう動くかもうわかっているんだから、次に進んでもいいと思う」
2人が希望するのを見てユウは心が揺らいだ。いずれは自分たちも大部屋に挑戦したいと思っていたのは確かだからだ。
しばらく悩んでからユウが口を開く。
「現状が楽なら次に進んでもいいかな。無理だったら戻ればいいんだし」
「その通り! なら明日挑戦しようぜ! ユウ、地図に大部屋は描いてあるんだろ?」
「あるよ。出入口近くは誰かが先に入っていると思うから、奥の方に行かないといけないけど。それと、
「
大部屋へ行くのに最も積極的なケネスが真っ先に主張した。ジュードが反対の声を上げなかったので明日の方針が決まる。
やることが決まったユウは腰の麻袋から地図を取り出した。脇で雑談をしている2人の話を聞きながらそれを見る。できるだけ無難な大部屋がないか探した。
翌朝、ユウたち3人は万全の調子で
「この地図を見て。これから行く所はここ、少し遠いんだ。でも、
「お、いいじゃねぇか。早く行こうぜ!」
「この大部屋が先に誰かに攻略されていたらどうするんだ?」
「他にもいくつか候補があるから心配ないよ。多少条件が悪くなることもあるけど、大部屋自体はいくつもあるからどこかで魔物と戦えるよ」
流れるような説明にケネスとジュードは納得した笑顔をユウに向けた。実際、1階とはいえ多数の地図を持っているユウにすれば大部屋の数は充分にあるのだ。
話が終わるとユウを先頭に3人は
そうして目的の大部屋の手前までやって来る。ここからが本番だとケネスとジュードがユウの前に立った。扉に手をかけたケネスが振り返って笑顔を見せる。
「それじゃ行くぜ!」
「魔物の数は多いそうだから油断だけはしないでよ、ケネス」
「こいつがヘマをしたら俺が助けてやるから心配はいらないぞ、ユウ」
「ちぇっ、お前っていっつもそうだよな。まぁいいや。それじゃ改めて行くぜ!」
盛り上がった気分に水を差されたケネスが一瞬口を尖らせた。しかし、すぐに笑顔に戻って扉を開ける。
開いた扉から見えた大部屋の中は当然ながら通常の部屋よりも広かった。大きさも事前に把握しているとおり50レテム四方というのが何となくわかる。
その大部屋の中で多数の魔物が待ち構えていた。その多くが薄汚れた緑色の肌をしたがりがりの小人みたいな
扉を開けたケネスが部屋の中に入ると魔物たちは一斉に襲いかかってくる。ジュードが相棒の背後を固めるべく後に続いた。
五月雨式に襲いかかってくる
「おらおら、どけぇ!」
「ギャッ!」
仕留めた
後に続くジュードはそんなケネスの背後を守った。
「それじゃ通せないな!」
「ギゲッ!?」
そんな2人に対して、最後に部屋の中へと入ってきたユウは少し離れた場所にいた。室内にいる敵味方の趨勢が把握できると2人の後方から右側へと移っていく。
「あああ!」
「ギギッ!」
2人に横から襲いかかろうとしていた
そうしているうちにケネスは
一方、ケネスの支援を堅実にこなしていたジュードは苦労していた。
ジュードの脇をすり抜けた
「ユウ!?」
「あああ!」
目を見開くジュードが見る前で、
次は周囲に目を向けたユウはケネスが2匹目の
室内にいるすべての魔物を倒したユウたち3人は床に落ちている魔石を拾いながら集まる。どの顔にもわずかな疲労が窺えた。
手にした魔石を目にしながらケネスが口を開く。
「
「けど、されど
「知ってる。ユウがいたから放っておいたが、この様子だと壁際で戦った方が良かったな」
「そうなんだろうが、あと1人いたら安定して戦えると思う。お前の後ろを俺が固めて、俺たちの両脇に1人ずついて敵を引っかき回すんだ。これでかなり違うと思うぞ」
「遊撃要員が2人か。ユウはどう思う?」
「僕もあと1人欲しいな。
「あーうん、そりゃまぁなぁ」
「少し無理をさせたようだな。悪かったよ」
自分の武器を拾うユウを見たケネスとジュードは少しばつが悪そうにしつつもうなずいた。戦闘中に主武装を手放すというのは余程のことだ。そうさせないようにすることも仲間の務めである。
ともかく、数で押し寄せられたら3人では厳しいということがわかった。例え格下の魔物であっても数が揃うと大きな脅威になる。今の状態では2階に行くことは無理だ。
大部屋で勝利することはできたものの、同時に課題が見つかったユウたち3人は難しい表情を浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます