第41話 『♡ Kyoko Love ♡』

番外編 康之編:



41.

 

 どうやら石川の結婚相手の垣本という男は、見た目も内面も

男前なヤツらしい。


 病気の妻を捨てた身としては、いたたまれず、その場を逃げ出したく

なった。


          ◇ ◇ ◇ ◇



 亀卦川はみんなの注意が自分に向かないうちにと、

そっと部屋から退出した。


 そして事務所の入ってるビルを後にして、ブラブラと歩きはじめた。



 力が抜けてゆくのを感じた。


 他人のモノになると人間のさがでよけい惜しくなるのか、

それとも思ってた以上に恭子に惚れていたからか

どちらなのか自分でもよく分からなかったが、ガックリきたことだけは

紛れもない事実だった。



 亀卦川はズドーンと落ち込んだ気分を立て直そうとした。




 いや、飲み歩くのに良かった相手ってだけなんだよ。


 明るくて陽気で年の割に擦れてなくてどこへ連れて行っても

あの美貌故に皆から羨ましがられて。


 そういうのに都合良かっただけなんだよ。


 結婚したら家事もできない箸にも棒にも引っ掛からないダラ主婦に

なるかもだ。


 そう思うことで、自分に結婚のチャンスがなかったことに

ついて自分を納得させようとしてみたが、上手くいかなかった。



 それは上手くいかない事例を自分は知っていたからだ。

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