番外編　康之編:

40-2.

　翌月石川に会った時、以前のようなバリアーを感じなかったので

気軽さを装って俺は彼女をランチに誘ってみた。

　即座に『付き合ってる人がいるから、ちょっと』と言われて

やんわりと断られたんだよなー。

　これでも意を決して誘ったっていうのにさ。

　付き合ってる人ねぇ～、ほんとかな。

　・・と斜めから見ていたら。

　同じ月の終わり頃、恭子ちゃんが垣本という新聞記者と電撃結婚したと

誰からともなく聞くことになった。

　恭子ちゃんは垣本恭子になった、らしい。

　なんだよぉ～、付き合ってる人がいるって本当だったんだな。

　はぁ～❕

　　　　　　　　　　◇　◇　◇　◇

　そして数日後のこと、本人不在の事務所でスタッフやモデルが

入り混じってきゃあきゃあ言いながら休憩室で話し込んでいるのを

何気ない風を装いコーヒー片手に片隅に陣取り、俺は耳をダンボにして

聞いた。

　一時期恭子ちゃんが難しい病気かもしれないと医師から再検査を

勧められていた時期に、難しい治らない病気になったからと

垣本氏からのプロポーズを断ったらしい。

　そうしたら、今の旦那が病気でも構わないから結婚してほしいと

プロポーズを撤回しなかったのだとか。

　それで女性陣が、垣本さんをめちゃくちゃいい男だと誉めそやし、

恭子ちゃんはいい人捕まえて羨ましいとか言って、モリモリ盛り上がって

やんの。

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