第29話 『♡ Kyoko Love ♡』29-2

29-2.


 「今何て言ったの? 」


 彼女は何故か前方を見たまま、俺に聞いてきた。


 「好きだ、って言った」

 

 「え~っと、それって猫のこと? ・・だよね? 」


 顔はこちらに向けつつ視線は何気に逸らし気味の感じで

確認してきた。


 「ううん、恭子ちゃんのことだよ」 


 「このタイミングでそれ言います? 」


 「うん、このタイミングだから言えたのかもな」


 「からかってるの? 」


 「まさか! ちゃんと交際も申し込んでるんだし、デートも

してるだろ? 本心・・だよ」


 「めったにしない経験でちょっと焦っちゃって・・

 よろけたちゃったよ。

 えっと、ありがと、素直にうれしいわ」


 「うん」


 異性との交際経験の多い女性ひとだから、もっとあっけらかんと

した反応が返ってくるかと思いきや、少しの動揺を伴って素直に

うれしいと言ってもらえたことが、俺も嬉しかった。


 『好きです』なんて言う予定は本当はなかった。

 真剣なお付き合いをと、交際を申し込んだ時点で相手に通じてる

はずだし。


 けど、瞬間好きだなぁと思った気持ちを伝えられてよかったと思う。

 四六時中、同じような高いテンションではなかなかいられないし。


 言葉にしていなければ、この瞬間の彼女への気持ちが雲散霧消

していっただけだろうし。


 今回のデートの大きな収穫になった、と思う。

 

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