第30話 『♡ Kyoko Love ♡』

30.


 子猫に夢中になってたら、私の側で一緒に子猫を覗き込んでた

垣本さんが耳元で、『好きだ・・』って言った。


 いきなりだよ?

 かわいいっ、だったら完全に猫のことだよね? ね?


 『好きだ・・』もたぶん猫のことだよ、なのに何で焦っちゃって

んの私?


 もうこんなシチュエーションで『好きだ・・』だなんてまったくぅ。

 意味不明で思わずよろけちゃったわ。


 顔がやたらと熱い。


 しかし、この男は油断ならない。

 勘違いして恥をかくことだけは避けたいと思った。


 よろけて子猫を落としそうになった私に、だいじょうぶかと

彼が聞いてくれて。


 「え~と、ちょっと椅子に座りましょうか」

 と答えつつ・・。


 落ち着けぇ~、おちつけぇ~と、私は自分に念じた。


 ちょうど近くに見えた長椅子に座ると彼も私の隣に座ってきた。


 もうこうなったら、彼の好きの対象物をはっきりさせて

おかないともらおうじゃないか、と思い私はきっぱりと尋ねた。


 ずっとモヤモヤするのは嫌だ。


 「今何て言ったの?」


 「好きだ・・」 って言った。


 彼は私の顔を見て答えた。

 でも私は彼の顔を直視することができなくて。

 

 

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