第2話  『♡ Kyoko Love ♡』

2.


 石川恭子が、上手くいってると思っていた白鳥から、

付き合ってる森田との別れを聞かされたのは、クリスマスの翌日で

世の中が気忙しくなろうとしている年の瀬のことだった。


 恭子が話を聞いたのは、仕事帰りの、駅からほど近いカフェの中でだった。


 そこは老舗でモダン風ではあるが昭和の香のする

シンプルな内装になっていた。


 ・・と語るも、実体験などではなくテレビでちらっと見た

昔のドラマなどからの感想だったのだが。


 ちょうど失恋の話を涙ながらに語るのにピッタリ、と

いった風に。


 同じ職場で今後度々顔を合わせるのも癪なので、年明け

早々辞めると多恵子が言い出した。


 ンもう~、これだから職場恋愛は難しいのよね~。


 そうだよね、分かるわ。

 しかも振られた側っていうのはさぞかし・・。

 私は心の中で相槌を打った。


 しかし、よくよく別れる原因になった話を白鳥から聞いてみる

と、微妙な心持ちになった。


2-2.☑



 多恵子は森田と12月25日クリスマスにデートの約束をしていて、

待ち合わせの時間は夕方だったけれど、なんとなく早く

彼に会いたくなり、多恵子は時間を繰り上げて彼の家へ

向かったという。


 彼の部屋で少しまったりと過ごしてからディナーに出か

ければいいやと思ったのだと言う。


 多恵子からしてみれば何気なく悪気のない予定の変更であるが

 相手側の森田からすれば


突然で急な・・

予定外でサプライズな・・


行動(ということ)になろう。


 一言の連絡も入れずに、相手の部屋に向かうなんて・・白鳥さん、

『なんと無謀な』と恭子は心の中で呟いた。


            ・・・


 森田の家に着き、多恵子がインターホンを鳴らすと、

インターホン越しに聞こえてきたのは女性の声だった。


 『どいうこと? 』訝しみながらも 咄嗟に多恵子は

『お荷物です』と宅配の業者を装った。


 そして、オートロックのエントランスを潜り抜け部屋の前に

辿り着くまでの間、考えた。


 え~っと、彼にお姉さんか妹っていたっけ?

 部屋の前で再度のピンポ~ン!


 「はぁ~い、今開けますぅ~」ドアが開き、見知らぬ女が

出て来た。


 「こちら、森田将生さんのお宅では? 」


 「え~っと、荷物は私が預かっとくわ」


 「森田さんいますよね? 呼んでください」


 「お名前は? 」


 「白鳥です」


 「将生ぃ~、早く来てぇ~白鳥さんだってー」


 どうも森田はトイレに入っていたようで、玄関から見える

廊下の右側のドアが開き、中からは訝しむ表情をした森田が出て来た。


 



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