弱くなる
「諒日って、こんな事で泣く人なんだ」
私は、意外、以外、何物でもない感情をまたも、諒日に抱いた。
「うっせーなー…。好きな奴、死なせたくないって思うの、そんなに変かよ」
さっきの敬語は何処へ行ったんだ?諒日は、また、生意気な口を利き出した。泣いてるくせに…。
でも、『好きな奴』…その響きは悪くない。泣いている姿も、やはり、悪くない。それなのに、どんどん、私の中で、恐怖が大きく育ってくる。好きな人がいると、人は強くなると言う。それは、そうかも知れない。当たっているかも知れない。
…逆も…あるのではないだろうか?
離れたくない。ずっと一緒にいたい。楽しい事を積み重ねたい。時には喧嘩だってしたい。諒日が年下だから、馬鹿にだってしてやりたい。からかって、からかわれて、じゃれ合って、いがみ合って、その結末、弱さを見せて、泣いたりしたい。私みたいに、強がりで、気が強くて、諒日みたいな長身の男を前にしても、一歩も引かなかった私みたいな人間でも、死ぬのは…やっぱり怖いんだ。
そして…愛する人が出来た事で、その人を守れなくなる。…いや、守らなければならない…。
怖い…。死ぬのが怖い。でも、諒日を死なせるのは、もっと怖い…。矛盾と、恐怖との、泥沼の中、私の頭の中には、強いはずの自分と、弱くなった、自分がひたすら行ったり来たりしていた。
「何考えてるの?」
黙りこくった私に、諒日は、そっと言葉をかけた。
「別に…。何も?」
「嘘だ。どうせ、俺の為に死のうとか…考えてるんだろう?」
「考えてないよ。自分が、こんなに弱いとは思ってなかっただけ…」
私は、正直に答えた。
「人間、弱いとこあって当たり前だろ?死ぬなんて…言い出すなよ?」
「そんな事は…私が決める事だよ。諒日が決める事じゃない」
私は、やっぱり、強がるんだ。こんな時まで…。怖いくせに…。本当は、死にたくないくせに…。地球を背負うなんて…本気で…1人で…出来るわけ無いのに…。でも、それを、諒日に言う訳には行かなかった。
人間、弱さを、見せちゃいけない時もある。私は、そう思って、生きて来た。だから、こんな私が出来上がった。それでも、後悔はしていない。…後悔は、していなかった…と言った方が、正しいだろうか…?
こんな、運命が、降り注いでくるくらいなら、もっと、弱く生きてくればよかった。泣いて泣いて、弱音吐きまくって、すぐ立ち止まって、すぐ悩んで、すぐ後悔して、すぐ生きる事を諦めて…。だったら、こんなに悩まず、恐れず、死ぬ事を受け入れられただろうか?誰も恨まず、誰も憎まず、誰も疎まず、『なんで私が?』なんて思わず、迷いなく、この命を捨てて、地球を…諒日を救おうと、思えただろうか?
…なんてね…。信じてるの?私が、あの占いを、本当に信じてるって思ってるの?
そう言ったら、諒日は、少しは安心するかな?私も…楽になれるかな?
『信じない』と言う、『弱さ』を知ったら、『強く』なれるのかな?
もしも、あの占いが真実なら…、『弱かったら』、『強くなれて』、
地球、守れるのかな―――…?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます