再会

 そのは、突然訪れた。


 占いに行ってから、2日後、私が正社員として働く、ファミレスに、新しくアルバイトが来ると言う。私は、顔合わせで現れたそのアルバイトの顔を見て、えげつない声を上げた。


「げ…」


「あ…」


 そう。だったのだ。2日前、街でぶつかって、謝るどころか、それはもう酷い悪態をついてきたあの男だったのだ。


「何?緒方さん、知り合い?」


 店長の広永ひろながさんが、聞いてきた。


「あ、イエ。知らない人です」


 私は、プイッと顔を背けた。


榎本諒日えのもとあすかです。24歳です。よろしくお願いします」


(年下かよ!!マジでむかついてきた!!)


 私は、榎本が年下だと知って、あんな失礼な態度を取ったのが、増々許せなくなった。



 ファミレスがオープン時間を迎え、私はホール。榎本はキッチンだったから、直接やり取りするのが少なくて、私は少しホッとした。また、変に交わると、どんな悪態をつかれるか分からない。関わらないに越したことは無い、と、私は思った。


 しかし、どんなに避けていても、神様は意地悪だ。休憩時間が一緒になってしまったのだ。


「「…………」」


 2人だけの休憩室に、沈黙が流れる。なんて、居心地が悪いのだろう…。私は、自分が年上だと言う事もあって、かなり癪だが、こちらから折れるべきかと思い直した。


「「あの…」」


「「え…?」」


 2人の声が魔法にかかったかのように重なる。私は、これ以上重ならないように、素早く次の言葉を発した。


「この前は…ごめん。ちょっと、貴方…榎本君に会う前に嫌な事があって…。イラついてたの…」


「あ、いや、こちらこそ。年上だとも思いもせずに…って言うか、女の人にあんな態度取って、すみませんでした。実は、家出してきたばっかりで、…親父と喧嘩して…、苛立ってて…本当に、すみませんでした」


 榎本は…榎本君は、そう言って、深々と頭を下げた。


(なんだ…意外と良い奴なのかな?)


 などと、私こそ意外に単純にそう思ってしまった。


「えっと…緒方さんは、ここ、長いんですか?」


 榎本君が、必死で会話を作ろうとしているのが分かる。


「そんな、無理に話題作らなくていいよ。最初はみんな無言に近いんだから。少しずつ、仲良くなっていけばさ、それでいいんだよ」


「…そうっすね…」


「あ、後、敬語も要らないよ。2つしか違わないんだし。もうとっくにため口使われてるしね」


 私は、意地悪な所がある。と言うのは、自分でも自覚している。散々酷い事を言われ、私も言い返し、罵り合った2人だ。今更敬語もないだろう。


「あ、やっぱり、怒ってる?あの時の事…」


「まぁ、怒ってないって言ったら嘘になるけど、君にも事情があった訳だし。仕方ないよ。もう忘れよう?これから、一緒に働くんだから」


「分かった。じゃあ、遠慮なく…」


「うん」


 そう言うと、私は、お弁当を口に運び始めた。




 私は、まだ、気付いていなかった。この時は―――…。

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