再会
その再会は、突然訪れた。
占いに行ってから、2日後、私が正社員として働く、ファミレスに、新しくアルバイトが来ると言う。私は、顔合わせで現れたそのアルバイトの顔を見て、えげつない声を上げた。
「げ…」
「あ…」
そう。あの男だったのだ。2日前、街でぶつかって、謝るどころか、それはもう酷い悪態をついてきたあの男だったのだ。
「何?緒方さん、知り合い?」
店長の
「あ、イエ。知らない人です」
私は、プイッと顔を背けた。
「
(年下かよ!!マジでむかついてきた!!)
私は、榎本が年下だと知って、あんな失礼な態度を取ったのが、増々許せなくなった。
ファミレスがオープン時間を迎え、私はホール。榎本はキッチンだったから、直接やり取りするのが少なくて、私は少しホッとした。また、変に交わると、どんな悪態をつかれるか分からない。関わらないに越したことは無い、と、私は思った。
しかし、どんなに避けていても、神様は意地悪だ。休憩時間が一緒になってしまったのだ。
「「…………」」
2人だけの休憩室に、沈黙が流れる。なんて、居心地が悪いのだろう…。私は、自分が年上だと言う事もあって、かなり癪だが、こちらから折れるべきかと思い直した。
「「あの…」」
「「え…?」」
2人の声が魔法にかかったかのように重なる。私は、これ以上重ならないように、素早く次の言葉を発した。
「この前は…ごめん。ちょっと、貴方…榎本君に会う前に嫌な事があって…。イラついてたの…」
「あ、いや、こちらこそ。年上だとも思いもせずに…って言うか、女の人にあんな態度取って、すみませんでした。実は、家出してきたばっかりで、…親父と喧嘩して…、苛立ってて…本当に、すみませんでした」
榎本は…榎本君は、そう言って、深々と頭を下げた。
(なんだ…意外と良い奴なのかな?)
などと、私こそ意外に単純にそう思ってしまった。
「えっと…緒方さんは、ここ、長いんですか?」
榎本君が、必死で会話を作ろうとしているのが分かる。
「そんな、無理に話題作らなくていいよ。最初はみんな無言に近いんだから。少しずつ、仲良くなっていけばさ、それでいいんだよ」
「…そうっすね…」
「あ、後、敬語も要らないよ。2つしか違わないんだし。もうとっくにため口使われてるしね」
私は、意地悪な所がある。と言うのは、自分でも自覚している。あの時散々酷い事を言われ、私も言い返し、罵り合った2人だ。今更敬語もないだろう。
「あ、やっぱり、怒ってる?あの時の事…」
「まぁ、怒ってないって言ったら嘘になるけど、君にも事情があった訳だし。仕方ないよ。もう忘れよう?これから、一緒に働くんだから」
「分かった。じゃあ、遠慮なく…」
「うん」
そう言うと、私は、お弁当を口に運び始めた。
私は、まだ、気付いていなかった。この時は―――…。
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