まだなのか?運命の人…
「長かったね」
占い師の部屋を出ると、エントランスで、紅茶を出してもらいながら、愛唯が、そう、付抜けるような言葉を発した。
「まぁね…。愛唯は?なんて言われたの?」
⦅…誰にも言っちゃだめだよ?⦆
紅茶のカップを置いて、そっと、横に座った私に、耳打ちした。
⦅上手く行くって!!⦆
ほっぺ、真っ赤にして、滅茶苦茶嬉しそうに、愛唯は言った。
(私が死ななきゃ…上手く行かないんだよ?)
心の中で、私は言った。
「翡翠は?何の占いしてもらったの?随分長かったけど…」
「あぁ…ちょっと人生に関して…」
「人生?ばばくさー」
「うっさい!」
私は、必死で笑顔を作って、必死で明るく振舞った。
「帰ろう」
私が言うと、
「うん」
と、愛唯が頷いて、残りの紅茶を素早く飲み干すと、アシスタントらしき人に見送られ、占い師の家を出た。
(これから…逢うんだよね?運命の人に…)
私は、自然と胸が高鳴った。過去付き合った男2人は、先にも言った通り、ろくでもなかったから、最後の恋くらい、まともな恋がしたい。
そんな想いで、しばらく街中を愛唯と話ながら歩いた。と、その時だった。
ドスンッ!!
もの凄い勢いで、誰かがぶつかって来た。私は思わずしりもちをついた。
「い…ったぁー…」
「いってぇー…」
腰を上げて、立ち上がろうとした時、ぶつかった相手も、しりもちをついていて、起き上がろうとしている所だった。随分、大荷物な男の人だ。
「いってぇな!気を付けて歩け!」
その男は、突然、そう言ってきたのだ。
「は!?ぶつかって来たのはそっちでしょ!?謝るくらいしなさいよ!!」
もともと、負けん気の強い私。ガタイの良いその男の言い草に、思わず言い返した。
「んだと!?女なら、もっと女らしく端っこ歩いてろ!」
「何ですってぇ!?なんで女なら端っこ歩かなきゃいけないの!?そんな大荷物持って、よく周り見もしないで、ぶつかってきておいて、謝り方も知らないなんて、大の大人のする事!?」
「ちょ…翡翠…」
私と、その男の、偉い剣幕の喧嘩に、愛唯だけは、オドオドしていた。
「おー、そっちの方がよっぽど女らしいじゃねぇか!お前も見習えば!?」
「お前!?初めて会った男にお前呼ばわりされる憶えないわよ!それに、最近は男にだって品格ってのが必要なのよ!人の事ばっか悪く言う暇があるんだったら、少しは自分の悪い所も直す努力したら!?」
「この…口のへらねぇ女だな!」
「それはそっちでしょ!?」
「「………」」
睨み合う2人。愛唯は、オドオドして、何も言えず、何も出来ず状態だった。
私がこんなに不機嫌なのは、やっぱり、あの占いのせいだと思う。さすがに、あの占いは、精神に来た。
「もういい。あんたみたいな非常識野郎に構ってる暇ないの!行くよ!愛唯!」
「あ…うん…」
愛唯は、ぺこりとその滅茶苦茶むかつく男に、まぁ、ご丁寧に一礼をして、私の後を追ってきた。
「…どうしたの?あんなに怒るなんて…。あんまり翡翠らしくないよ?」
「んー…地球が滅亡すれば、分かるんじゃない?」
「は?」
けれど、私は、何故か、あの超むかつく男の顔が頭から離れないでいた―――…。
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