地球滅亡

 私の周りを一回りすると、その占い師は、自分の席に戻り、唐突にこう言った。




「後…1ヶ月、この空の星々が全て、ブラックホールに吸い込まれます。星々を失った地球は…滅びます…」


「は!?」


 何を言っているんだろう?からかってるの?お金取らないって、こうやってビビらせて、やっぱりお守りでも買わせて、お金儲けしようって考えね?と、私は、頭に血が上った。


「ふ、ふざけないでください!変なお守りでも買わせるつもりですか!?バカにするのも良い加減にしてださい!!」


 席を立とうとした瞬間、私は動けなくなった。


「今、貴女の力をすべて支配しました。貴女は、私の話を全て聞き終えるまで、そこから立ち上がる事は出来ません」


「な…なんで…そんな事…」


「貴女…だけだからです。この、地球を救えるのは…。ですから、私の話を聞いてください。お願いします」


「で…でも…地球滅亡なんて…信じる方がどうかしてます!それに…救えるのが私だけって…どういう意味ですか?」


 私は、動けなくなって、この人の力を80%くらい、信じるほかなかった。


「貴女は、この後、ある男性と出逢います。その男性と、貴女は恋に墜ちます。その人を、救う為に、貴女は星になるのです。その人を救おうと言う、愛の力で、星となった貴女は、天に導かれ、ブラックホールを塞ぐのです。そして、地球は救われる…という事です」


「ば!馬鹿馬鹿しい!私が星になる!?どうしたらそんなおとぎ話信じられるって言うんですか?」


「そうですね…。信じられないのも無理ありません」


 私の血相とは相対して、占い師は、冷静沈着だ。その態度が、また私をイラつかせた。


「ですが、本当なのです。貴女が、ある男性に出逢い恋をすると言うのも、星になる…と言うのも…。しかし、残念ながら、星になったら、貴女は一生、人間に戻る事は出来ません。ずーっと空で、愛する人を見守り、その人を照らす為だけに空に存在することになります」


 もう、訳が分からない。恋をする、そう言う占いはあるかも知れない。でも、地球滅亡って何よ!?星がすべてなくなるって何よ!?ブラックホールが全部を吸い込むって何よ!?そんでもって、それを救う為に、私が人間を捨てて、星になる?何よ、それ!?


 私の頭は、爆発寸前だった。


「もう、変な事言うのやめてください!訴えますよ!?」


「貴女は…その動けない体で、まだ私の力を信じないおつもりですか?」


「!!」


 それは…それだけは、確かにそうだ。私は、さっきから、怒りで、立ち上がって、この占い師を殴ってやろうとしているのに、体がピクリとも動かない。


「私は…探していたのです…。貴女を…」


「はい?」


「星が消える事も、ブラックホールが全て吸い込む事も、地球が滅亡する事も、もう、3年前から私は分かっていました。しかし、それを救う者が誰なのか、どう占っても、分かりえませんでした。しかし、今日、緒方さん、貴女が現れて、はっきりと分かったのです。貴女が、救世主…だと」




 小指すら動かせない状態の私に、こんな話をする占い師。


 信じる?信じない?





 あなたは、どっち―――…?

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