第四十一話 鞘
外界の人間がクアドラトゥーラ大樹海に住まう者に最も重要な場所を問えば、彼らはまず間違いなく
当然である。ローダンテス大陸における
だが、いくら
そこで東皇は天地開闢後、この地に居を定めてすぐに小さな森を生み出した。
森は神樹の
そうして常に
現在では
十氏族の長老でさえ東皇の許しを得ずには足を踏み入れられない、神聖な場所。
今、ローザと二人の
皆一糸纏わぬ姿となり、手を繋いで円陣を組みながら膝をついて。
周囲の木々を包んで光る緑色の
体内に取り込まれて
だが、ほんの一平米ほどの範囲に
白い野薔薇だ。
偶さかそこに苗があったのか、誰かの
いずれ、この気恥ずかしい儀式も一面に花が咲く頃には終わるだろうか。
ぼんやりとそんなことを思っていた
「はぁ……今日もエニス様は麗しゅうございました」
「そうだな、ああしてプロヴィンキア様と並んでおられると、特に絵になる」
この二人は見た目も性格も全く違うが、ことエニスに関しては馬が合った。
どちらも
「だが、気のせいか少々やつれているように見受けられた」
「ええ、お疲れのご様子で……でもそこがまた♡」
「あの憂いを帯びたお顔で微笑まれでもした日には心の臓が止まるやも知れんな」
「本望です! いっそ止めて欲しい!」
「フッ、同感だ」
繰り返す。筋金入りの
なお余談だが、当のエニスは彼女らの態度にたびたび困惑している。
「……あんた達、ほんとエニス大好きよねー」
そんな二人の様子にローザは呆れ混じりの笑みを浮かべた。
とは言え、大切な友人を傍で支えてくれる存在が好ましくもあるのだろう。
その
「エニス様と引き合わせてくださったこと、ローザ様には感謝しております」
「うむ。お陰様で五百年もの間、充実した推し活の日々を送ることができている」
「……………………うん」
だが、嬉々とする
「あら?
「こら、察して差し上げろ」
「あっ――……すみません。責任、感じてらっしゃいますよね。
「ん? んー……もちろんそれもあるんだけど。なんて言うのかな。我ながら成長しないなって思ってさ」
「ローザ様……」
「あはは、なんかごめんね。気にしないで」
長としては未だ若い二人の
だが、それでも親神の友が辛そうにしているのを見過ごすのは忍びなく。
「そんなことより二人とも付き合ってくれてありがと。今夜一晩よろしくね」
ローザが不自然に明るい声で話題を変えたところ、長老達は視線を交わした。
直後、先に口火を切ったのは
「ふむ……そのように仰られると、なにやら高ぶるものがあるな」
「……ん?」
「私とて一夜の相手がローザ様ならばやぶさかではないが」
「なにそれ超混ざりたい!
「んん?」
ローザが言葉の意味を計りかねている間に
かくしてローザがからっと晴れやかにさせた筈の場は、早速二人の
「要は
「もう脱いでますけどね!」
「これはしたり」
「いやいやいや待って待って何言ってんの? あたしは別におふっ」
流石に色々察したらしい。
制止しようと声を上げたローザは、けれど白黒二本の腕にどん、と押し倒され。
すぐに
今一度繰り返すが、彼女達はエニスの
だが、同時に周辺の人間関係もその一部として捉え、同様に慕っている。
即ち、ローザもまたエニスの一部にほかならない。少なくともこの二人にとっては。
などと色々言いはしたが、要はただ節操無しなだけである。
「……では、ローザ様」
「お慰めして差し上げます♡」
「ちょ、ちょっと待っ――」
その夜、
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