NO7 いい子は寝る時間



「縺�▲縺」縺」縺」縺」縺」縺」縺�縺ゅ≠縺ゅ≠��シ�シ�!!?」


強く硬いコンクリートのところへ打ち付けられる少女。

彼女の腹の上では、“おい、モズク!おキロ!“と暴れながら必死に少女を起こそうとするぬいぐるみの姿がある。



「…あれ、オモチャ屋さんと誰かと思えば…――、誰さんだっけ?」


「オレサマのことヲ、オモチャ屋なんテいうナ!!

それと…こイツのことカ?…調べてもそう簡単にハわからねヱとおもウゾ。…で、なんでオマエがいるんだよ。前に御主人から玩具ニンゲンもらッテたくセニ。」


青年は、長髪を二つに分けて結われた髪を物欲しそうにいじる。



「別にいいでしょ。オモチャ屋さんにはカンケーないんだから。」


青年は宇宙飛行士の被り物ようなものを見に付けており、顔面の部分にはクレヨンでラクガキが描き残されたような跡がある。

また、其の被り物越しでも分かるほど、青年は面倒そうに顔をしかめながら、端っこで蹲りつつ、壊れた玩具を抱き締めてた状態で、深い眠りへと堕ちた少女を見つめている。


「――…それで、この子は新しいオモチャにしていいの?」


「ハ!?そんなコトいうわケねヱだロ!!そもそもヘルガは物欲センサーはたらキすぎだあから、もうすコシ抑えるんだナ。」


「なに、…駄目なんだ。折角オモチャにできると思ってたのに。」


けだるげな声で呟くヘルガ青年。



「いや絶タイにあげナイからナ。――…そレト、オレサマは身体のテンケンにいくケド、テはだすナよ?」


そういうと、ディルはちょもちょもと歩きながら人形が沢山飾られた保管室へと消えていき、それに感化されたように少女の眼が覚めた。



「ばいばいオモチャ屋さん。――…あれ、君、目覚めたの。…良かった。暇するんじゃないかって憂鬱になりかけてたから助かるよ。」


「え?また新たな変な人…。…あれ、私…まだ夢の中なの?さっき眠りについて…夢から覚めたと思ってたのに…本当になんでこんなに長い夢なのよ…」


ゆっくり眼を開けながら辺りを見回すと、そこには知らない青年が。

常人なら焦り出すだろうに、“全て夢“として受け入れている少女にとっては、特に違和感も何も感じることはなかった。


「…ねぇ、起きたばっかりでまだ頭は冴えてな良いと思うんだけどさ、僕と一緒に遊ぼうよ。…最近のオモチャはすぐ壊れちゃってつまらなくてさ。」


「…あ、遊ぶの?…まぁ…ディルさんもいないわけだし、…ディルさんが戻ってくるまでなら相手してあげる。」


少女は親指に手を添え考えたあと、こくんと頷きながら返答する。

すると被り物に描かれていたラクガキが、不気味なものへと変化した。


「ほんと?…じゃあ、前にオモチャとひとりかくれんぼしたら館長に怒られちゃったからね…。あ、そうだ。――…僕“親指探し“やりたい。」


「?…何それ。私やり方わからないんだけど…」


「大丈夫、僕が0から教えてあげるから。それに、…―――」


ヘルガは段々声色を上げ、尚且つ早口になりながら少女に喋り続ける。そして、未だに洗脳状態に比例しているといっても過言ではない状況下におかれている少女は、特に何も疑わずに無意識に少年に距離を詰めていきながら、首を縦に振り話を聞いた。


          ―――…少年の背後に蜃カ蝎ィがあることも知らずに。




「――…おい、モズク。さっさと帰るぞ。」


「!…ディルさ…、ん?」


モズクと呼ばれた少女は、其の呼び名に既視感をあるものの、視界に入った姿は自分の知っているモノとは全くの別人であったという滑稽な事に首を傾げる。



「?…あァ、この見た目の事で何か不満でもあるのか?今さっきの身体のテンケン中でな、少しの間は別の姿だがキにすんな。」


「あ…ぁ、…何れ本物のディルさんの姿が分からなくなりそう…。」


少女は“ディル“と名乗る者の姿を髪から足元までまじまじと見つめる。あのときの奇怪的且つ不気味なぬいぐるみの要素は全くもって見当たらない。彼女の視界に映し出された人物の姿は、膝下まであるエプロンドレスを身に着け、髪は茶系の色が僅かに含まれた赤ワインレッド色で、丁寧に編み込みがされている。

 

「――…どうした?あまりにもオレサマが綺麗デ惚れちまったノカ?」


にまりと笑うと、やや尖り気味の八重歯がちらりと顔をのぞかせる。銀月色の瞳に少女と青年の姿が映し出された。



「――…あのさ、オモチャ屋さん。僕これからこの子と一緒に親指探しやろうと思ってたのに、邪魔しに来るのやめてほしいんだけど。」


青年の声には先程よりも少し苛つきが滲み出ていた。




「あ、そうだ…えっと、でも“ディルさんが来るまで“って約束だったから、又今度…機会があったらでも良い?」


少女は、目の前の如何にも暴走寸前の野生動物のように怒りをあらわにする青年を相手に、彼女なりの対応で落ち着かせようと試みるも、それを遮るようにディルも口を開き続ける。


「おいモズク、コイツとそんな約束してナイでさっさと帰らないト、徘徊者に喰われんぞ。それが嫌ならさっさとオマエの部屋まで案内するからついてこい。」


「だから、オモチャ屋さんは黙ってて。僕はこの子と遊ぶんだからさ、少しは静かにし…―――――」





「濶ッ縺�ュ舌�縺薙s縺ェ譎る俣縺ォ蠕伜セ翫@縺。繧�ァ�岼縺倥c縺ェ縺�°縲ゅ■繧�s縺ィ縺頑ッ阪&繧薙�逶エ縺仙�縺ァ蟇昴※縺�↑縺�→縲√☆縺舌%縺�d縺」縺ヲ騾�£蜃コ縺吶s縺�繧ゅs縺ュ縲ゅ〒繧ゅb縺�、ァ荳亥、ォ繧医√♀豈阪&繧薙′譚・縺溘°繧牙ョ牙ソ�@縺ヲ縺ュ縲�」




壊れた機械やモスキート音、硝子が擦れる音であったり耳鳴りのような絶対不快音と呼ばれるものを凝縮させたような音が鳴り響く。しかし少女は、現在の状況はどうなっているのか何も把握することは出来ない。


何故なら、







「――…モズク、もう大丈夫ダ。眼、開けていいぞ。」


「…ディル、さん?あれ…此処は、…部屋?というか、ディルさん距離近くない!?えぇ!!?ちょ、私一応さ年頃のきゅるるんな少女なんだから、それなりに紳士になろう??…でね、何でハグする要素があったの?え?…っ全然離れないし、ゴリラじゃん!!」


―――…そう、ディルが強く離れぬようにと正面から抱き締めているのだ。



「はいはい…随分トせっかちナ女だなオマエ…。きゅるるんな少女というより、ぎゅふふんに変更シトケよ…もうちょっと可愛く演技トカできないノカ?」


そういうと、ディルは渋々自分の腕の中から少女を開放し、そのまま少女は大きなベッドへ流れるように身を預けた。



「…そもそも夢のくせに現実味が強すぎるの…、感覚までリアルなのが更に嫌。ディルさんの匂いは意外と良かったけど。」


「いやドサクサに紛れテオレサマの匂い嗅ぐって何事ダよ…。まァ…今回位は“夢“って事にしといてやるよ。…じゃあな、よく寝て明日に備えろよ。」


ディルは困ったように笑いながら、少女に手を振り部屋を後にする。すると、外にはまた変わったモノが待ち伏せするように壁に寄りかかっていた。




「聞いたわよ、“おかあさん“が出たんですってね。」


壁に寄りかかっていた和装の大人びた女性が、少し名残惜しそうに口を開いた。因みに、彼らが“おかあさん“と呼んでいるのは深夜に館内を蠢く徘徊者のことである。



「…嗚呼、そレでヘルガがおシオき部屋へレッツラゴーって感ジよ。今回は長くなるだろウネぇ…まァ、そうイウこトもあルカ。」


「そりゃ“おかあさん“ですもの、子供と認定されたモノが深夜に物音を立てていたら“良い子はもう寝る時間よ“って言いながら叱りに来るわ。

――…それで、あの眠り姫ちゃんは起きたの?」


女性の背後から傘を指した男性のような影が現れる。

しかしディルも和装の女性も、赤の他人のように気にも止めていない。



「一応ネ。起きてもまた寝ての繰り返シみたいナところハあるけドナ。」


「そう。…でも目が覚めたようなら良かったわ。」


ディルは部屋の扉を名残惜しそうに見つめる。そして女性は、其の姿を兄妹の愛おしい姿を目に焼き付ける母親の様に幸せに満ちた表情を浮かべた。

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