第2話 手にしました


 昼休みの会話も過ぎ、放課後になった。

 祥のやつは昼休みが過ぎてから新作が楽しみになっていたのか時計をしきりに見て注意力が散漫になっていた。


 しかも、今日の午後は数学の厳しい担任だったのにも関わらずだ......やっぱゲーマー姉弟だと思わざるを得ないよね。

 当然注意をうけてしまい、放課後の職員室連行は免れぬ事態となってしまう。


 まぁ、僕はきちんと受けましたよ?家で勉強すると結構時間盗られてしまうからね......そこまで頭がいいとは言い切れないし、趣味に時間盗られたくないからさ......。


 ということも相まって祥からは


「先に姉貴からもらってきてくれ。最悪ゲームで会えたら一緒にやろうぜ~」

「あ、うん。でもVRMMOなら祥って結構フレンドいるだろうしいつものチームでやるんじゃないの?そしたら僕ソロでもいいんだけど」

「え~、いつも最初は一緒にやってただろ~最初だけ!最初だけでいいからさ~」

「うん、それならいいかなぁ。とりあえずさ、祥は早く指導受けに行きなよ。じゃないとゲームする時間なくなっちゃうよ?」

「それもそうだな......。じゃ、急いで行ってくるわ」


 といって、祥は職員室へ向かった。

 ゲームに対するやる気はすごいのにさ、学業のほうにもやる気を出してくれてもいいよね。IQ自体は高い方だからさぁ。


 そんなことを考えながら、僕は先に陽菜さんのもとへ向かった。

 あ、ちなみに陽菜さんやっぱりURO買っていたみたいで僕たちの分まで買ってくれたみたいだ。さすがですよ、陽菜さん......。まぁ、あとでご飯作ってあげたほうがいいよね?あの人毎回ご飯たかるからねぇ。



 一度家に帰った僕は家族の分の夕飯を作ったあと、陽菜さんのもとへ向かった。

 両親は共働きでいつも帰りが遅いから、基本僕が作ることになっている。

 まぁ、祥たちもたまに食費もってたかりにくるから、ちょくちょく作ってる。家が近所にあるってのもいいけど、頻度だけは考えてほしいんだよねぇ。

 ひどいときなんて4日連続で来て祥のお母さんにシバかれるところまでが日常の一セットみたいなものになってきちゃってるし。


 まぁ、今回は陽菜さんへのお礼の分もあるし、好物のから揚げでいいかな?


「陽菜さん、いつもありがとうございます。こちらお好きなから揚げですよ」

「あぁ、カズ君ありがとね。あと、これだね。はい、UROだよ。それにしても珍しいね、カズ君がわざわざこっちのほうまで来るなんてね。そんなに楽しみだったの?」

「あ、まぁそれもあるかもしれませんけど......。陽菜さんがまずのめり込んでるかもしれないと思いまして、こちらから向かったほうがいいかなと思いました。やっぱりもう始めちゃいましたか?」


 祥や陽菜さんは基本的に新作ゲームが発売されるとすぐにやり始めるから、発売してから最短でも5日くらいは食事もたかりに来ない。

 今回は特に楽しみにしていた二人のことだし、今日は間違いなく来ないのはわかりきったことだ。

 とりあえず、物々交換をしたあとに陽菜さんはから揚げを一口つまみ食いしながら答える。


「そりゃ、まぁ始めちゃたよ。なかなかだよ子の新作は」

「そうなんですね、どんな感じですか」

「あー、まー今回ばっかりはやってみたほうがわかるかも......。さすシェフィって感じかな?」


 しっかりとしたレビューをするゲーオタの陽菜さんがコメントに困っていることに少しばかり驚く。

 今までとはまた違ったゲームなのかどうなのかはわからないけれども、それでもここまで反応の仕方は珍しい。

 ほんとにどういうゲームなんだろうか?


「まぁとにかくカズ君も早くやりたいだろうからね、ほら唐揚げありがとうね」


 といって、タッパーを返す陽菜さん。

 いや、食べるの早すぎませんか?


 まぁ、いいか。この人のゲーム欲はいつもこんな感じかな?

 僕もなんだなやりたくなってきたし、早く帰ろうかな。


「はい、ありがとうございます。ではまた」

「うん。じゃあまたね〜」


 そうして僕は自宅へ戻る。

 早く帰って早速やってみようかな?


 やはり僕も2人の熱に当てられたのか、足早に戻っている感覚がわかってしまい微笑みをこぼさざるをえなかった。


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