第1話 発売


 梅雨が明け、暑い日差しがこぼれるこの夏。

 世界は二度目の震撼を果たした、なお学校でもその話で話題は持ちきりとなっている。とうぜん僕たちもそれは同じことだったんだけれども。

 あのゲームが発売されたからだ。




 それはある梅雨入りを宣言したころ、世界は震撼した。


 あのVRMMOの大手であるシェフィールが新作ゲームを発表した。

 それだけでも僕たちは大いに盛り上がっていたが、今回は違った。


 一日、一週間、半月と時が過ぎても続報が一切来ないのだ。

 シェフィールという会社を信用していないわけではない。だって、この会社が出しているゲームの数々は世界規模でかつ数々の賞を受賞するほど認知度が高く、人気であり知らぬものは愚か者と呼ばれるほど老若男女問わず有名大手のゲーム会社なのだ。


 そのシェフィールが今まででも新作ゲームを発表しているがその時はしっかり情報を開示している。どの情報も他の追随を許さぬほどの画期的なシステム、特に有名となったのが【TIACシステム】【独自AI】などなど現代におけるVRMMOの基盤を作ったといっていいほどの会社。


 誰もが期待せざるを得ない会社の新作ゲームをなぜ今回だけは情報の一切を開示していないのだろうか?


 僕たちの周りでもそんな会話をいつしかしている。


「なぁ、カズ~結局何のゲームなんだろうな?UROって」

「そうだねぇ、一時期ほんとに発売されるのかも不安になったもんね」



 あ、どうもカズと呼ばれた、僕_三森 和宏みもり かずひろは幼馴染で級友でもある浅賀 祥あさが あきらと件の新作ゲームであるUROについて話をしていた。


 UROっていうのは、シェフィールから今日から発売を予告されていた新作ゲーム【United Revolution Online】の略称であり、巷ではウロだったりUROと略されている。



「それにしても、どうしてここまで情報を開示しないのかな?だってゲームを売りたいんだったら多少なりとも情報を開示するべきだよね?何かしら事情があるとか?それとも初期ロットが少ないからかな?」

「どうだろうなぁ。だが、シェフィールが販売ロットを少なくするってのはねぇだろうよ。実際神ゲーをいくつも出しているわけなんだしさ。だから意図的に出していないんだろうよ。CEOの話もあったしな」

「確かにそうだよね。で、どうする?購入する?」

「ん~、多分だけど姉貴がすでに......な?多分カズの分もやってそうだよな~」

「あぁ、確かに陽菜はるなさんならありえるよね」

「まぁとにかく一度家に帰って確認するしかないんだけどさ。なんでド平日に発売なんてするんだか。少しは学生のことを労わってくれてもいいだろうがぁ!」


 それはそう、今日は水曜日つまりは学生にとっての中間地点......ド平日なのである。ちなみに陽菜さんは大学生でかつゲーマーなのでほぼ確実に新作ゲームは購入済みだと思う。ついでとか言って僕たちの分も買ってくださるのはうれしいんだけど毎回貸しって言われるからどんな返しをするべきか困るんだよね。


 だけども、そんなことよりも新作ゲームのことのほうが気になる。

 早く時間が過ぎてくれないかと思いながら、


 とりあえずあと2限分授業を受けないとね。



 今は昼休みなんだからさ。





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