第21話

徳島はスマートフォンの画面上で、銃のカスタマイズ画面を睨むような目で見ている。


ゲーム上とはいえ自分の命を預ける銃なのだ。そのカスタマイズを行うことで、勝率が上がるかもしれないのだ。


真面目にカスタマイズを行うのは当たり前だ。


徳島がカスタマイズしているのは、オーストリアの兵器会社が製造したAUGという銃である。


といっても、この『out of Battle ARENA』というゲームは実銃の情報をある程度、ゲームに反映しており、実銃の評価が良ければ、ゲーム上でも、それなりの能力がある。


後は、徳島本人の取り回しや好み及び載せるサイトの倍率などを決めるだけである。


もちろん、銃身(バレル)や銃の部品は撃発すると火薬のカスが付着して汚れてしまう。長い間放置すれば、精度にも影響が出たり最悪使用不能になってしまうので、使用後はメンテナンスが欠かせないのだ。


このゲームはそこまで反映しており、実際に操作をすることはないが、メンテナンス中の銃を使用することはできないようになっている(部品を交換したり、同じ製品の銃を購入することで、同一種類の銃を使用することは可能)。


徳島はできるだけ、精度の高いバレルを搭載し、老眼の目でも見ることができるように、等倍サイトと4倍のスコープの2つを搭載する。


グリップなども見直し、少しでも反動を抑えたり、銃を構える速度を早くできるカスタマイズをする。


しかし、最後のリザルト画面をみると、少しため息をつく。


銃本体とカスタマイズの値段が途方もない値段になっているのだ。




現実世界の軍事組織は莫大な費用を食い潰す金食い虫だ。基本的には何かを生産することはない。


この『outofBattleARENA』の世界では、ゲームの参加者はPMC(民間軍事会社)というよりは、個人的な傭兵という位置付になっており、その費用(ゲーム内通貨)は現金を課金をするか、ゲーム内のアイテムを売ったり、相手から奪うことで手に入れるので、稼ぐにはそれなりの時間と労力がかかるのだ。


徳島は稼いだゲーム内の通貨の残高を確認してOKボタンを押してカスタマイズを終える。


まだまだ装備の設定があるのだ。

徳島の長い夜は終わらない。


仮想空間のゲームを生き抜くことで、行方不明の妻を見つけることができるかもしれないのだ。真剣になるのも仕方のないことだろう。

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