第19話 奥様は何処へ?

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「月面からみる地球はやはり想像通り綺麗であり、犯罪都市と言われている黒山市も綺麗な地球の一部であった。

さて、どうやら人生で一番の難題だぞ。どうやって地球に生還してやろうか?

皮肉な女神に向いてもらえるように最後まで足掻いてやろう。

諦めたら両親、恋人、義理の息子に叩き出されるからな。」

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私は、一人で簡単な昼食のあと、ひと通り家事を終わらせ、空いた時間に好きな漫画「ムーンオウル」を読み終えた。

もう何回、読んだか覚えていないけど、「ムーンオウル」は何度読んでも楽しい。


「やっぱりムーンオウルは良いわ〜。この最後まで諦めないとこが格好良いのよね」


私はそう嘆息し、本を閉じる。


「ムーンオウル」は漫画と言ってもアメコミを意識していて、いわゆる「ジャ◯プ系」漫画と違い、本が大きく総カラー印刷になっている。そのため、他の漫画本よりも少しお高い値段になっている。


そのため、「ムーンオウル」やそのスピンオフ作品の「ラットバロン」等を全作品買うとなるとかなり高くなってしまう。


私の趣味だから、本代は自分のお小遣いから出しているし、夫のさんちゃんは私の趣味である「ムーンオウル推し」を咎めたりせずに、たまに私の本棚から「ムーンオウル」の漫画を出して読んだり(もちろん、本棚から出すときには私の許可を取って読んでいる最中、本を汚す可能性ある物は飲食不可)、私がムーンオウルを楽しげに語るのをニコニコと笑いながら聴いてくれたり、そんなに頻繁にはされないが、たまに映画化されたら、一緒に観に行ってくれている。


夫のさんちゃんは自衛隊に務めており、船で勤務していて、留守がちだ。新婚の頃は

「いつ帰ってくるの?」

なんて聞いても、教えてくれなくて、寂しかった。


結婚して何十年も経つと、寂しいなんて感情はあまりないけどね。


長年経験していると、出発前のさんちゃんの荷物の大きさや入れていく下着やお菓子の量で大体の帰ってくる日数が判断できてしまうようになるのは自衛官の奥様あるあるらしい。


「あっと、そうだ!回覧板がきていたから隣の山形さんに回さないとね。」


一人でいると、気楽でいいけど、独り言が多くなるのが玉に瑕だ。


私は出発前の荷物の量から判断して、そろそろ帰ってくるであろう夫からの


「帰ってきました。早く会いたいよ。」


という連絡に少しでも早く返信できるように、回覧板の他にスマートフォンを持って家を出た。

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