第12話 脱出地点へ走るおじさん



徳島は脱出地点付近の建物にできるだけ足音をたてずに近づく。


建物は2階建てであり、脱出地点に面して窓があるのは2階だけだ。


徳島は慎重に扉を開けて中に侵入する。


1階には2つ部屋があるが、全部扉が開いて、部屋の中にある戸棚や箱が荒らされていた。

明らかに誰かが物資を漁った形跡であろう。徳島は1階の探索を諦めて2階へ向かう。

もちろん、足音をできるだけたてずに行動することは忘れてない。


まず、第一に捜索するのは脱出地点に面した窓を持つ場所だ。


徳島は階段を慎重に上がりできるだけ音を出さないように心がける。相手によっては銃声などの轟音は抑えて、話し声や足音などの小さな音は増幅するというヘッドセットを装備しているかもしれないのだ。


徳島は階段を上がり、2階の大体の構造を把握する。

小さな建物だ。

問題なく脱出地点に面した窓を持つ部屋を特定する。


その部屋の扉は開いているが、徳島の位置からは中を確認することはできない。

できるだけ音をたてないように目的の部屋に向け移動する。


徳島が慎重に歩を進めると徐々に部屋の中を確認することが出来るようになった。


部屋の中には徳島が思っていた通り、窓から脱出地点を伺っている男を発見した。


徳島は誰何をすることもなく、UMP45の照準を窓際男に向ける。


狙いを相手の首に向け、銃弾を発射、窓際男は何も言わずに倒れてデスボックスと化す。

徳島は素早く窓際に近づいて、脱出地点やその周辺を確認、怪しい人影はおらず、徳島は安堵のため息をつくと、窓を開けて外に飛び出す。

2階といえどもそんなに高くはなく、徳島は足腰に痛みを感じることもなく、脱出地点に向けて全力で走り始める。


永遠にも続くような時間に感じたが、脱出地点に到達するのは実際にはかなり短い時間であった。


徳島が脱出地点まで辿り着くと、脱出にかかる時間がカウントダウンされ始めた。


徳島は周辺を素早く観察、音紋や敵影などは確認できない。

ちょうど近くにあった土嚢の後ろに匍匐の姿勢で隠れる。


脱出へのカウントダウンがゼロになったとき、徳島の意識は途切れた。頭の中には

「チュートリアル終了、おめでとうございます。」

との声が流れていた。

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