第10話 麦畑のおじさん
徳島は慎重に索敵を行いながら麦畑の方向に慎重に足を進める。
幸いにも徳島には音が目に見えるという、out of BattleARENAでは当然の機能だが、現実ではチートのような能力があるので、比較的精度良く索敵ができるのだ。
微かな足音や話し声、遠くの銃声まで音紋が視界に表示されており、真後ろなどの視界外の音でも、矢印が出てきて、大体の方角が分かるようになっているのだから、ゲームでいうところのウォールハックの劣化版のような能力だと思っている。
ちなみにウォールハックは壁やオブジェクトで本来は見えない敵やアイテムを透視して見えるようにするというチート行為のことだ。
徳島は索敵をしつつ、UMP45を構えて麦畑に進入する。麦畑は誰も収穫はしておらず、かなり成長しており、徳島をすっぽりと隠す背丈まで伸びている。
もちろん、徳島も、麦のせいで敵がいた場合は見えることはないだろうが、音紋を見ることができるので、大方の居場所を把握することができるはずだ。
徳島ができるだけ音を出さないように慎重に進みながら、索敵をしていると、
タァーンと銃声が鳴る。
徳島は素早くかつできるだけ音を出さずに腹這いになり、再度、銃声を確認する。
幸いにも、徳島を狙っているわけではないのか銃声はすれども、周辺に弾着の音はしないので、別の場所のプレイヤーかNPCを狙ったものだろう。
音の方向を探すと麦畑にある2階建ての建物の屋根に狙撃手が銃を構えているのが見える。
ぼんやりとだが、SKSに望遠倍率のタクティカルスコープを乗せているみたいだ。
幸いにも、こちらには気付いていないみたいなので、徳島はこのままほふく前進で近づいて、有効射程内で射撃してしまおうと腹這いになったまま、ほふく前進で進み始めた。
ほふく前進など、教育隊ぐらいでしかやった経験はないが、やれば昔を思い出し、楽しくなっている自分に徳島は気付いた。
こりゃ、生きて帰ったら筋肉痛かな?
徳島はそう考えながら、ほふく前進を継続して、何事もなく建物付近にまで近づいて、しゃがみ撃ちの体勢で狙撃手をUMP45で狙い撃つ。徳島のUMP45にも2倍の倍率スコープを乗せているので、銃弾はあやまたず狙撃手に全弾命中し、狙撃手はものも言わずデスボックスと化す。
わざわざ、屋根に登るのも面倒だし、徳島がUMP45に装着しているサプレッサーも高性能なものでもないので、近くにいれば敵に銃声を聞かれている可能性もあるので、徳島は工場地帯に向け、その場を立ち去る。
麦畑のエリアと工場地帯の干渉エリアでは、何人かNPCが話しながら歩いていた。
徳島はUMP45を構えながら、近接し、単独行動をしているNPCの足を狙って撃つ。
俗にいう足撃ちという嫌われるような行為である。
徳島が、過去にプレイしたゲームで「膝に矢を受けてしまってな」などと言って、冒険者を辞めて衛兵になった事を示唆したNPCがいた。
日本では、そんなに受けなかったが、海外のファンには受けたらしくて、ユニークな動画が作成されていた。
紛争地域や戦場では、膝に銃弾を受けると膝が破壊されてまともに歩けなる。
しかし、即死する可能性は少ないので、しばらくは地面に横たわり、周囲の仲間に助けを呼ぶわけだ。
同輩を助けるため近寄る兵士を撃つという悪辣な狙撃手が良くやる手段なのだが、FPSゲームだと、立派な攻撃手段の一つである。
多くのFPSゲームでは頭部を守るヘルメットや身体を守るアーマーはゲームでも存在しているが、足に対して防具をつけるFPSゲームはなかなか存在しない。
またヘッドショットなどは、一撃死などもあるので、プレイヤーは気をつけているが、足に対してはダメージ判定も高くないので、気にしているプレイヤーは少ない。
しかし、防具がない=ダメージの減衰が交戦距離のみという状況なので、足撃ちやレッグメタと呼ばれて、積極的に狙ってくるプレイヤーがかなりの数いるのだ。
また、徳島がやっている現実に即したFPSゲームでは、数多くの銃弾が存在しており、銃弾によって、貫通力が高いものや身体的ダメージが大きいものがある。
貫通力が高い銃弾は設定金額が高価であり、貫通力が低く、身体的ダメージが高い銃弾は比較的安価なので数を揃えやすいのだ。
つまり、足撃ちがしやすいゲーム環境なのである。
徳島はそんなことを考えながらも、単独行動するNPCを見つけては、一人一人始末をして、工場地帯を目指して慎重に足を進めて行くのである。
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