第9話 番外編 高校生の徳島君は無口だけど彼女(未来の奥さん)の事が大好きです。
「香川さん。初めて会ったときから好きでした。僕と付き合ってください。」
「ごめんなさい。私には好きな人がいるので、貴方とは付き合えないの。」
私に告白してきた同じクラスの男子生徒に対して、私はにっこりと微笑み答える。
「そうなんだね。呼び出して告白してごめん。」
男子生徒は、ショックを受けた顔をしたが、素直に立ち去って行く。
同じクラスだけど、仲が良くもないし、あまり話したこともない、ただ顔を見て興味を持った異性に告白して、OKを貰えるのはあまりに夢を見すぎかなと思う。
あぁ。告白してくれたのが、三ちゃんだったらすぐにOKするのにな。
私、香川 愛歌(かがわ あいか)には幼馴染が2人いる。
一人は小学校からの付き合いで山口君だ。。
彼は、学業優秀、スポーツ万能、顔も良く、性格も温厚という。私から見たら完璧な男子だと思う。
だけど、ちょっと周りの意見を聞き過ぎて必要以上に慎重になる癖がある。
もう一人が三ちゃんで、彼は幼稚園からの付き合いがある幼馴染だ。
三ちゃんは、どちらかというと無口で成績は普通、運動は彼が部活でやっている剣道はとても優秀だけどそれ以外は平凡、顔も普通だけど、話していて癒やされる感じ。
私は、小学校高学年頃から三ちゃんを意識し始めて高校2年の現在まで片思いの状態、だけど、三ちゃんも私のことを嫌ってはいないとは思っている。
お互いに部活や朝練がない時には、一緒に登下校しているし、家も近所でよく遊んだり、お互いの家に行き来をしている。
三ちゃんはお父さんは病気で亡くなっていて、今はお母さんだけだから大学には進学せずに早く働きたいと言っている。
私達の在学している高校は、多くの生徒が大学や短大、専門学校に進学希望をしているので、高卒で就職を希望している三ちゃんはちょっと珍しがられている。
私は三ちゃんがお母さんのことを思って早く働きに出たいと思うことはとても素晴らしいと思う。
そんな三ちゃんが私は大好きだ。
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高校2年の山口航基(やまぐち こうき)には大切な幼馴染が2人いる。
一人は香川愛歌という女子生徒、小学生からの付き合いで、彼女はフェンシング部に所属しており、成績も優秀、可愛くて人当たりが良いのだが、彼女はもう一人の幼馴染、徳島三郎(とくしま さぶろう)といつも一緒にいるイメージを山口は持っている。そう彼女の最大の特徴は、徳島三郎のことが好き過ぎているというところだ。
もう一人の幼馴染は徳島三郎、彼も小学生からの付き合いで、無口だが、ぶっきらぼうではなく、話しかければ穏やかに返事をしてくれる。小学生の頃は活発で香川と一緒になって、引っ込み思案な山口をよく遊びに誘ってくれたり、勉強もよく教えてくれたりしていたのでとても助かった。彼は剣道部に所属しており、剣道となると凄まじい気合で普段の無口で穏やかな態度とは僕も違い、積極的に攻める剣士となる。
しかし、剣道部以外の生徒は、部活での態度は見ていないので、クラスメイトからはその無口な性格ゆえに少し陰キャっぽいという扱いを受けている。
そのせいか、彼は周囲からは僕や香川とはあまり合わないみたいな評価を受けている。
香川とは僕も含めて3人でよく登下校しているが、香川の隣はいつも彼が並んでいるのが、クラスメイト達は、不思議というか不釣り合いに思えるらしい。
変なことにならなければいいけど。
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私は、同じ1組の友人達と話している。山口君と私は同じ1組で、三ちゃんは隣の2組だ。高校1年生のときは同じ2組だったけど、高校2年になって、別のクラスになって、私はかなり落ち込んだ。
まぁ、いつまでも落ち込んでいても仕方がないので、来年には同じクラスになったら良いなと、思っている。
私は休憩時間は、同じクラスの女子に奥手な男子と付き合うにはどうしたら良いのか、アドバイスを貰おうと、三ちゃんの名前は出さずに聞いたりしている。
しかし、いつも皆は
「山口君なら愛歌から告白したら、絶対にOKしてくれるよ。」
なんて、言ってくる。
いや、私は山口君は単なる幼馴染だからね。
別に好きでもないからね。
告白しないよ!
隣の2組に行って変な話をすると怒るからね!!
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今日は香川も徳島も部活なので、僕は一人で下校しようとして、
下駄箱までいったのだが、教室に忘れ物をしたことに気付いた。
仕方ない。少し面倒だけど忘れ物を取りに引き返そうと教室まで戻る。
そうしたら、いつもは放課後になったらクラスには人はいなくなっているはずだが、今日は女子生徒が何人か残っていて扉の外からでも聞こえるような大きな声で話をしていた。
話の内容は大半は恋バナみたいだったので、僕は少し入るのに気後れした。
話の途切れた所で扉を開け中に入ろうと、様子を伺っていたら、香川の話題が出てきた。
「そう言えば、最近、愛歌が奥手の男に告白するやり方なんて聞いてこない?」
「よく聞かれる!」
「愛歌って山口君が好きなんだよね?でも、山口君ってあんまり奥手そうじゃないけどね?」
「愛歌って実は、隣のクラスの陰キャ君、ほら、えぇと、徳島って男子が好きみたいよ。」
「名前を聞いても、全然、顔が思い浮かばない?イケメンなの?」
「いや、普通。全然、山口君の方がカッコいい。」
「えぇ!もったいない!だって、愛歌って山口君と登下校とかいつも一緒にいるじゃない。せっかくだから、山口君と付き合えばいいのに。」
「そうだよね。愛歌は陰キャなんかにはもったいない。山口君付き合うのがいいよね。」
「その徳島って男子が愛歌と一緒にいるようなら、2組の女子とか男子に言って、徳島を物理的にはイジメるまではいかないけど、無視するぐらいして貰おうよ。」
「良いね!そうして貰おう!」
僕はその話を聞いて、忘れ物なんかどうでも良くなった。まずいこのままじゃ徳島が無視されてしまう。
どうしたら良いのか?
僕は必死になって考えて、家に帰っても考え続け、布団に入ったときに良い案が思いついた!
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私は、昼休み、山口君に屋上に呼ばれた。
山口君は先に来ていて私が屋上にきて2人きりになってもなかなか喋らず、昼休みが終わってしまうのが、嫌なのかしきりに時計を確認していた。
何か言いたいなら早く言えばいいのに。
ガチャっと屋上の扉が開いた音がしたので、私が振り向くと三ちゃんが入ってきた。
「香川、いや、愛歌、小学生の頃から君が好きだったんだ!僕と付き合ってくれ!」
私が三ちゃんに気を取られていると山口君がいきなり告白してきた。
えぇっ!なんてタイミングの悪い!
まるで、山口君の告白を三ちゃんに聞かせたいからこのタイミングに告白したみたい。
「そうだったのか。山ちゃんは愛歌のことが好きだったんだ。ごめん。いつも俺がいたから告白できなかったのか。」
そういう三ちゃんの顔はかなり辛そうだった。
三ちゃんは教室に戻ろうと後ろを向いて屋上のドアノブに手をかけた。
その背中はかなり寂しそうだ。
あぁ!イライラする!
寂しくて辛いなら逃げずに立ち向かえばいいのに!
しかも、山口君の告白を聞いただけで、まだ私の返事は聞いていないでしょ!
「三ちゃん!待ちな!」
私の部活の時に出すような鋭い声にさすがの三ちゃんもびくっとなり、動きを止めてこちらを向く。
そして私の顔を見て、気付いたのだろう。私が怒っていることに。
私と三ちゃんは付き合いが長いから表情だけである程度感情が読めるようになっている。
「山口君、どうして私にいきなり告白してきたのかな?しかも、普段はほとんどクラスにいる三ちゃんがなぜか告白したタイミングで屋上にきたの?
告白前に時計をチラチラ見ていたのは何か関係あるのかな?」
私は怒りを隠そうともせずに、しかし、表面的には笑顔を浮かべて山口君を問いかける。
山口君も小学生からの付き合いだ。
私のことは、三ちゃんの次くらいには理解している。
私の顔を見て、嘘をついても無駄だと気付いたのか、それとも三ちゃんの辛そうな顔を見て申し訳なくなったのか喋り始めた。
「うちのクラスの女子が話していたんだ。香川と三ちゃん釣り合わなくて、僕と香川が釣り合っているから、香川と三ちゃんが付き合うようなら、三ちゃんを無視したりするよう2組の知り合いにお願いするって。だから、一旦、僕と付き合うことにして高校を卒業したあとに別れて三ちゃんと付き合って貰おうと思ったんだ。」
「それで、三ちゃんも告白の時には呼んだら、優しい三ちゃんのことだから、私の事を諦めて山口君に譲ってくれるって考えたのね。」
私は、ため息とともに、指をボキボキと鳴らす。女子らしくなくて申し訳ないけどね。
「ふざけるな!?
乙女の青春は短いの!
大切な初彼氏、彼氏との毎日の登下校、文化祭もある。
体育祭もある。
修学旅行もある。
なんでそんな大事な行事を単なる幼馴染というだけで好きでもない男子と過ごさなくてはならないの?
私は三ちゃんとこうした行事を過ごしたいの!夏祭りを浴衣でデートしたいの!」
山口君は屋上で正座をさせて懇懇と説教をした。なぜか三ちゃんもその横で正座していて同じ説教を受けていた。
「三ちゃんも辛いならすぐに諦めない!例え、山口君が告白していても、三ちゃんも私のことが好きなら簡単に譲ったり諦めたりしないで!」
三ちゃんはハイ!と部活の先輩や顧問に返事をするように元気よく返事をした。
「山口君、告白はありがとう。だけど私は三ちゃんが好きだから、貴方の告白は受け入れられないわ。」
私がそう言うと、山口君は苦笑いをして
「本当にごめんなさい。」
と必要以上に丁寧に謝ってきた。
少し声が震えていたのは、正座をして足が痛いせいかな?
そして、昼休みが終わる5分前には2人を解放した。
「それで、私は三ちゃんのことが好きって言ったけど、三ちゃんの返事は今日はもらえない感じかなぁ?」
教室に戻ろうとした三ちゃんに私はそう問いかける。
三ちゃんは慌てて私の方を向き、
「俺も愛歌が好きです。ぜひ付き合ってください!」
その応えを聞いた私は三ちゃんに笑顔を向けた。
「ハイ!よろしくお願いします!今後は簡単には諦めないでね。私は年を取っておばあちゃんになっても三ちゃんのことが大好きだからね。」
「わかったよ。今度からは俺は諦めたりしないから。クラスメイトに無視されても挫けないよ。俺はしつこいから、愛歌をずっと好きでいるからね。」
私は三ちゃんの笑顔を見て安心した。彼は約束は必ず守るのだ。
「ありがとう。例え遠く離れてもちゃんと私を見ていてね。側から居なくなっても私をちゃんと見つけて側に引き寄せてね。私は三ちゃんの隣にいるのが1番幸せなんだから。」
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