第75話 いつか、普通の女の子に戻りますと言う日はくるのだろうか。

 梅沢家の人ならざる者が増えた新しい日常が始まったので観てみよう。


 夕が突然居なくなったことで、桃子は仕事が忙しくても若干かまってちゃんになっていた。

 朝、目が覚めると共に、隣に眠る夕に抱きついて離れない。


「ん、、おはよう、桃子。どうしたの、甘えちゃって。」

「甘えてないよ。夕が隣で寝てるから嬉しいだけ。」

「じゃあ、ぎゅーってしてね♡」

「うん。ぎゅーーー!」


 やっと、2人の温度差が埋まったようだ。朝から良い雰囲気である。しかし、この2人にはもう、2人の時間をいつでも邪魔できる存在が増えていた。


「オキタカ‼オ散歩ツレテケヨ‼」バタバタ

「ソノ前ニミルククレ‼ハヤクシロヨ‼」ドーン


 ちっちゃくて一見かわいいけど、顔は人間で口の悪いスフィンクスのアギョーとウンギョーだ。ちなみに性別はない。頭が良いので普通にドアを開けて寝起きの2人に飛びついてくる。


「はいはい、、ミルクね?ちょっとその口の悪さ、何とかならないかしら。。」


 一応、夕が筆頭飼い主である。ベッドから起き上がると、2頭を連れてキッチンへと急ぐ。


「っていうか、散歩するの?どうしよう、外を連れて歩いたら騒ぎになりそう・・・。」


 その時だった。リビングにはすでに起きていたメジェ君が、朝からワインを嗜んでいた。足と目しかないはずなのに、ソファで足を組んでいてもなぜかワイングラスが持てる不思議なメジェ君。人間の目には認識出来ないだけなのだろうか。。


「ブルゴーニュハイイネ‼タンニンノ深ミガアル‼ア、グッモーニン‼」

「おはよ、メジェ君。あのさ、この子たちのお散歩って街で騒ぎになりそうなんだけどどうしよ?」

「アア、コイツラニエジプトニ行ク方法ヲ教エルカラ、毎日エジプトデオ散歩サセロヨ‼」

「ええ、なんかすごいね。私って毎日エジプト行くの・・・?パスポートとかいらない?」


 夕はこの時、毎日1時間エジプトに行くことになった。何度も言うようだが、普通のかわいこちゃんである。


「あと、この言葉使いどうにかならないかしら?口が悪すぎるの。」

「ウルセー‼」

「5千年前カラコウダ‼」


「生意気ダヨナ。シャベレナクスルカ?ソレトモカワイクスルカ?」*自分に似ているとは思っていないメジェ君。

「え、悩む!どーしよ。無難にしゃべれなくしたいけど、、かわいそうだしかわいくしてくれる?」

「ワカッタ。ボルドーノ赤買ッテクレヨナ‼カワイクナーレ‼トキメキビーム‼」ピカー‼


 メジェ君がスフィンクスたちに目からビームを当てると、なぜか神の計らいで顔がゆるキャラ風にめたんこかわいくなった。そして、


「夕ちゃっ!(*ฅ́˘ฅ̀*)♡アギョー、ミルク飲むっ!」

「ウンギョーもっ!(⁎˃ᴗ˂⁎)キャハ!」


「えっ!!ミラクルかわいいっ!!!ビクゥッΣ(゚ω゚ノ)ノ」


 ボルドーの1万円の赤ワインを供えることによって、夕は最高にかわいいペットを手に入れた。今後溺愛することになる。もうペットで良いだろ。


「かわいいね、かわいいね!♡桃子も連れてお散歩行こっか!♡」


「「うん!お散歩っ♡(*ฅ́˘ฅ̀*)(⁎˃ᴗ˂⁎)」」


「あーん、めちゃくちゃ愛くるしい~!」


「おはようございます、草村でございます。出勤致しました。」*草村さんはまさかのバイク通勤なので革ジャン、革パンで登場。


「あ、ちょうど良いところに草村さん。これからお散歩にエジプト行くけど一緒に行きましょ?」


「あら。それは是非。この草村、砂漠での隠密活動は初めてでございます。過激派はどのくらい居るのでしょうか。。血が騒ぎます。」


「面倒ダカラ、紹興酒ノ瓶ヲ手ニ入レテクレ‼ソコヲエジプトニ繋ゲルカラ‼」


「かしこまりました、メジェド様。草村、夜になったら中華屋で一瓶空けてきます。あ、二瓶ですね、あちらに置く用と。」*酒豪草村という衝撃


「桃子~?エジプトにお散歩に行くよー?」


「え、今から?わかった、鬼UVケアするから待っててー?」


「あ、私もするー!」



 どんどん、普通じゃない家になっていくのだった。*酒の消費もやたら激しい。


 そして、心の中で夕は、メジェ君ももう少しかわいい話し方にならないかなって思っていた。見た目はかわいいのに、と。。



 続く。

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