第67話 実はこいつが一番かわいい

 ブラウンマッシュルーム。推定2千と24歳。表向きはテレビでお馴染みの有名占い師。気分で占うので占ってないことが多いがなぜかよく当たる。

 裏稼業は魔術師である。表社会、裏社会ともに、要人にはよく知られる人物だが、その正体は明かされていない。

 あるスナックのママがブラウンのことをひちゃこと呼んで、まるで自分の娘のように可愛がるが、そのことを知ったものは、なぜか半日分の記憶を失ってしまうという。


 ここだけの話だが、昔はアイドルとして活動していた。ブラウンが黒の組織として普段怯えている唯一の弱点は、昔所属していたアイドル事務所である。

 アイドルを辞めてから、魔術の世界に身を投じ、紹興酒の瓶やバームクーヘンを使って異世界や時空を越えることができるようになった。内緒だが、江戸時代の桃次郎が盗賊に襲われたときに、現代の桃子に転生させて助けたのはこのブラウンである。メジェドとは仕事の仲間だ。特筆する点はあと一つあるが、それは後で話そう。


 夕がブラウンの秘密の館に入り、秘密の地下室に通されると、そこはまるでファンシーな世界だった。壁一面にはピンクに緑の水玉模様があるキノコの絵が描かれ、ふかふかのソファーに大きなテレビとゲーム。ドアには娯楽室と書かれていた。


「さ、ブラウンのラボへようこそ。入りたまえ。」

「わ、わぁ、、すごい。ここで一生だらけていたい。。」

「ふ、そんなに褒めるなよ。そのソファーに座るがいい。沈んで出て来れなくなるから、後で引っ張ってやろう。」

「し、失礼します。わ、わわっ、、体の半分が埋もれてっ!!なんて無重力感!!」


 底なし沼にハマったウサギのようになった夕。抜け出せないので持ってきた草餅はブラウンに勝手に食べるように言った。


「ふむ。うまそうな草餅ではないか。君の家ではほぼ毎日お昼ご飯をご馳走になっているし、メジェ君も世話になっているからね。今回だけはタダで占ってやろう。で、何を占って欲しい?」モグモグ


「はい。桃子は仕事の才能が豊かで、いろんな仕事をしていましたが、ついに漫画家業が忙しすぎて、ここのところずっと朦朧としているんです。このままでは倒れてしまうし、、何より、私たちの恋人としての甘い時間がとれません。」


「なるほど。では、ちょっと未来を見てくるから待っててね?このまま続いている未来と、二人が一番ラブラブな未来を見てくるから、10分くらい待ってて?にゃんぱらりっ!!」


 ブラウンはそういうと、ピタッと動かなくなった。シーン。


「え、ブ、、ブラウンさん??」


 まるで人形のように動かなくなったブラウン。心配した夕はなんとか底なし沼のようなソファーから抜け出して、ブラウンのところへ近寄ろうとした。後少しだ、、何か掴むものを、、。そのときだった。夕は掴んでしまった。ブラウンが顔を隠すために決して脱がないフード付きの茶色いローブを。


 するり。。無防備なブラウン。ローブが全て脱げて下に落ちてしまった。その姿は、、その姿はっ!!!


「え。くっそ可愛いんだけど!!!え!うっそ!めたんこ可愛いんだけどぉぉ!!!???」


 まさかの、極上の美少女であった。そして、、


「え、キャミソールとショートパンツ。なかなかの谷間。。そして美少女。うわ、まつげなっがい!こ、これは、、もしかして、、とんでもないものを見てしまったかもしれない、、、。」


 そう。これがブラウンの最大の秘密であった。夕や桃子、そして出版社の妙。樹里や叶。その全てが可愛く美人であったが、、


「実はこいつが1番可愛いんじゃ。。」


 そうなのだ。実はこいつが1番可愛いのだ。しかし、ブラウンには秘密があった。昔、異世界で玉藻前ちゃんというめちゃくちゃ可愛い子とちょっとだけ付き合っていた。そのせいで、ブラウンには妖術が使える力が芽生えてしまったのだ。ブラウンの目を見るだけで、すべての老若男女は瞬時に恋をしてしまう。最強の魅了の力なのだ。


 今、ブラウンは目を閉じて寝ているように固まっている。これでもし目を開けて寝ていたら、ちょっと怖いし、夕が危なかった。が、そのときだった。


 ぱち。ブラウンが未来から戻り、目を開けてしまった。夕はブラウンのあまりの可愛さに顔を覗き込んでいた。目を開けたブラウンの前には夕の顔がアップで現れた。


「うおっ!な、なんでソファーから出られたの!!あれ、っていうかブラウン、ローブ脱げてるじゃん!っていうか顔近っ!ああっ!!だ、ダメじゃん!顔を見たら!!目を見たらダメだっ!!っていうか、ばっちり目が合ってるじゃん!!!」


「す、好き、、、。なんて可愛いの、、ブラウンさん。。ああ、なんて吸い込まれそうな瞳、、そして桃のようなほっぺ。可愛い、、可愛い、、」


「ああっ!!やっぱり草のものを護衛につけておけば良かった!夕だからと思って気を許してしまっていた!あ、おいこら!匂いを嗅ぐな!!あ、ちょっ!ほっぺを触るなーーーっ!!ああんっ、くしゅぐったい!きゃあん!♡」


「ブラウンちゃん~♡」

「いやぁぁぁぁぁ!!ブラウン、好きな人いるんだからぁぁぁ!!」


 この攻防は草村さんが助けに来るまで、30分続いた。



 続く。

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