第60話 草村機密ファイル①
私の名前は草村。偽名でございます。草の者として、真名を人に知られるわけにはいかないのでございます。年齢はもちろん不詳。実年齢より老けた演出をしておりますが、この道45年のベテランと申しましたけれど…、幼少期よりくノ一として、そして家政婦としての英才教育を受けておりますゆえ、それほど年齢はいっておりませぬ。
こう見えて私、草村は、プロポーションのほうも自信がございます。某時代劇のくノ一入浴シーンをご存知でしょうか?そう、あの有名な。あれは何を隠そう私でございます。*おちゃめな嘘も人心掌握の能力な草村さん。
さて、私が桃子様の家政婦としてごやっかりになり出して1週間が過ぎました。これは桃子様には内緒なのですけれど、私の裏の仕事は桃子様に関する報告書を、毎週ブラウン様に提出することでございます。なぜか?それは性癖…もおそらく在るのでしょうが、、桃子様の出生にブラウン様が関わっていらっしゃるからでしょう。これ以上は草の者として口外できません。
本日は、重大な報告をしに、ブラウン様の元へとやってきたのでございます。
コンコン。ある秘密の館のドアを叩く草村さん。扉は開かずに奥から声が聞こえる。
「何者だ?団子なら間に合ってる。」
「西新井の草団子でございますが?」
「よし、入れ。」
これが秘密の館に入る暗号なのだ。基本、草がつく会話をすればとりあえず扉は開くという。先日、うっかり地元の小学生が「なんだこの屋敷、古すぎて草」と言ったので扉を開けてしまったブラウンさん。セキュリティーの脆弱性を懸念しているところだ。
「なんだ、草村か。ねぇ、本当に西新井の草団子持ってるの?」
「もちろん、買ってきましたよ。食べながら桃子様についてご報告致します。」
「やった。暑いからローブ脱ぐよ?今日、お気に入りのキャミソールなんだ♪見て?ワンピースの刺繍入りなんだけど、キャミソールなの。ウケる!」
「あら、素敵ですこと。その鹿が全日本を泣かせたという噂の、、」
「トナカイだぉ?あ、待って?サングラスするからこっち見ないで?」
*ブラウンさんの目を見ると誰でも恋をしてしまう強力な魅了の力があるのだ。
「すちゃ。ブラウンはマッシュルームの形のしゃれたサングラスを装着したぁ!!はい、いいよ。」
「はい。それではご報告致します。桃子様は夕様に本気の恋をしてしまったことで、転生前の桃次郎が持つ母への想いと、女性を守りたい想い、そして今の桃子としての1人の女性を愛する想いが混乱してしまっています。」
「え、そんなの前からじゃん。草団子うっま。」
「それが、この草村が1週間見ている限り、重症なのでございます。どうか対応をしてあげてはくださいませんか?」
「例えば、どの辺が重症なの?」
「では、報告書を読ませて頂きます。」
これは昨日の桃子様と夕様のやりとりでございます・・・・・・・
桃子様は、学校が終わった真央様と晴様がお越しになると、3人でゲーム配信をなさっておりました。夕様は草村とキッチンでお夕食の準備をなさっておりました。
「さて、夕様。そろそろ準備が整いますので、桃子様に切りの良いところでダイニングへいらっしゃいますように伝えてきますね。」
「あ、草村さん、私が行きます。」
そう言って、夕様はなにも考えずに桃子様の元へ行ってしまったのです。桃子様は、水も弾く珠のような肌の麗しいJKに挟まれて、デレデレ(ノ∀ヾ*))デレデレしておりました。
「桃子、、そろそろ晩ご飯出来るよ、、。」
「あ、夕。ありがと。すぐ行くねー♪あ、真央氏~!今のずるいぃ!」
「へへーん、桃子さんがよそ見したのが悪いんだよー?」
「デレデレ(ノ∀ヾ*))デレデレ 手加減してくだされ~♡」
こんなの、温厚な草村でも締め上げたくなります。夕様は嫉妬深い女性でございますから、すぐに態度に出したのですが、、
「もう、知らない。ずっとゲームやってれば?」
普通、このセリフを聞いた者は、蛇が首に巻き付いたかのように息苦しくなり、冷や汗が止まらないはずでございます。しかし、童心の桃子様は、、
「わかった!真央氏晴氏!あと1時間勝負だ!!」
と、大素直大車輪を回転させてしまったのでございます。。
この危険を察知した草村は、慌てて桃子様にこっそりと「夕様はヤキモチを妬いておられます」とお伝えしたのですが、、
「それは大変だ!すぐに謝ります!!」と言って桃子様は家を飛び出しました。そして戻ってきたときに手にしていたのは、カーネーションの花束と、手荒れ用のハンドクリームでした。夕様へプレゼントだったのでございますが、、
「夕!いつもありがとう!これプレゼント!!」
「え、・・・は?母の日?」
もう、この後のことはこの草村でさえあまり思い出したくはございません。あの冷え切った空気。私は真央様と晴様を駅までお送りし、ちょっと遠回りをして戻ってしまったほどです。
草村ファイル、続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます