第52話 かわいいに捕まってしまいました・・・

 やっと。やっとのことで、夕に付き合って欲しいと言えた桃子。力を使い果たし、とうとう気絶してしまった。そして、そんな煮え切らない桃子と両思いであるはずなのに、恋人になる決定だが出せないでいた夕。やけになって泥酔、からの泥寝。。


 二人が目を覚ましたときには、夕が泊まる予定だったホテルのシングルベッドの部屋ではなく、デラックスなスイートルームに二人で隣り合って寝かせられていた。


 早朝、夕は夢を見ていた。

 桃子が自分に向かって叫んでいる。

「愛している。一生そばにいて欲しいっ!夕が好きっ!!」

「ああ。やっと、言ってくれた。私も好き。。桃子とずっと一緒に居たい。私たち、これで恋人同士だね。嬉しい、、さぁ、もうなにも我慢することはないわ?」


 キスして・・・。


 同じ時。桃子も夢を見ていた。

「う、、ごめんなさい。。う、うらまないでっ!」

 ura-mima-su-uramima-suー

「やめて、、だって恥ずかしかったんだもんっ!推しと付き合うなんてどうしたらいいのかわからなかったんだもん!!あああっ!!!口からっ!生命エネルギーを吸い取るきなの!!??夕っ!助けてお願い!もう一度だけチャンスをっ!!」


「ぎょえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!ウワアアァァ 三三(ノ இωஇ)ノ」


 ぷちゅ。

 あ、ああ?

 や、やわらこい。。


 桃子が目を覚ますと同時に、夕も目を覚ました。なぜか唇を重ねたままで。


 おっ、おっ、、まっ!


(ふごぉぉぉっ!!!???!?!?!?!?)

(ぐもぉぉぉぉっ!!????!!?!!?!)


 二人とも、あまりの驚きに離れないままパニックに。


(ふご??)

(ふぐぅ??)


 なんなんだろうね、人って。一度山を越えてしまえば、そこは平地という感じなのかな。徐々になんとなく思い出される昨日の記憶と、目の前にある推しの顔、そしてふれあっている唇。え、何か二人ともトロンとした顔になってきたよね?


(ふご・・・。)

(ふぐ・・・。)


 え、そう言うのってアリなの?

 そのまま、二人は強く抱き合い、意識のあるままキスをし続けた。え、なにそれ。


(好きっ!桃子っ!!)

(なにがなんだかよくわからないでござうぅぅぅぅ!!!)


 とりあえず、5分くらい、キスした。号外でーす。


 やがてゆっくりと少し体を離すと、二人はここはどこ?なんで私たちは一緒に寝てた?を確認しようと、あたりを見渡した。ご丁寧に、薔薇の花びらが散りばめられた部屋に、大きなキングサイズのベッド。どうやらスイートルームだ。ブラウンさんの計らいに違いないと桃子は思った。


 まずは状況確認だ。ブラウンさんに連絡をしよう。って言うか家の鍵閉めてなくない??あとシフト入ってたっけバイト、、なんて慌てて起き上がろうとする桃子。時刻はAM6:00だ。


「待って、桃子。。」無職夕は遮った。

「あ、夕。えっと、バイトのシフトを、、」金持ちアルバイター桃子

「昨日、私は酔っ払っていたけど、、貴方は私にそばにいて欲しいと言ってくれた?」

「あ、・・・うん。その後失神しちゃったみたいで、、ここに来るまでの記憶がないけど。。」

「そっか。ねぇ、お願い?もう一度、今。はっきり聞きたいの。」

「えっ!?も、もう一度でしゅかっ!!??どどどど、えええっ、また倒れちゃうかもしれないけど!!??」

「だって、ちゃんと聞かないと。私たち、恋人になったんだなって信じられないじゃない。。」

「こ、こ、恋っ、びとぉっ、ですかっ!?」

「え、・・・違うの?違ったら私もう、昨日のスナックで働くか鹿之助さんの秘書に、、」

「えっ!!いやっ!!待ってっ!!こっ!恋人にっ!なってほしいですっ!あああああああああああっっ!!!!˚‧º·(´ฅωฅ`)‧º·˚グォォォ‼」

「ああ、やっと。言ってくれた。。今日から私たちは、恋人同士でいいのね?好きってたくさん言い合えるのね??」

「あ、うわ、、あわわわ。。そ、そんなリア充に、、わ、わいが・・・!?」


 やっと念願叶った夕。ゆっくりとまた桃子の顔に近づいた。

「桃子・・・」

「ゆ、夕さんっ・・・」


 その時だった。

「コンコン。ルームサービスです。朝食をお持ち致しました。」


「「うわぁぁぁぁっ!!」」

 かなり良い雰囲気で、超甘い空気に入り込んでいた二人。思わずベッドから飛び起きて離れた。

「え、ルームサービスなんて、、あ。ブラウンさんが頼んでおいてくれたのかな。」

「は、はーい。今開けますー。」ドキドキバクバク


 ルームサービスが部屋の中に通されると、それは見事に豪華なブレックファーストが用意されていた。そして焼きたての茶色いトーストには、ブラウンと焼き印が押されていた。焼き色なのかブラウンさんのことなのか、、判断しづらい。。


(私って、やっぱり、恋が進展しづらい呪いでもかかってるんじゃないかしら。。ブラウンさんに占ってもらおうかしら。。)と、夕は本気で思っていた。


 とりあえず、やっと恋人同士になった二人。

 とうとう、桃子は愛でるだけの推し活人生を終えて、かわいいに捕まってしまったのだった。



 続く。


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