第50話 最近の趣味は赤提灯で日本酒です。

 夕が泊まっているホテル部屋の窓の外から、劇的に愛を叫ぶ予定だった桃子。

 直接部屋まで行ってこいやと言われて、トボトボと屋上から夕の部屋の階へと降りた。やっと入手したチケットを家に忘れてコンサート会場には入れないファンの気持ちがわかった桃子。


「ブラウン氏は、わざとこの試練をわいに与えたのだろうか。。」

 そうこう考えていたら夕の部屋の前に着いちゃったから、あれ~?どこかな~?と言う独り言を言いながら廊下を5往復した桃子。しびれを切らした草の者が両側にバリケードを張った。


「むむっ・・・。四面楚歌。(゚ロ゚; 三 ;゚ロ゚)」

 仕方ない。桃子は深く息を吸って、桃子が泊まる部屋のドアをノックした。

 コン、コン。コンコン。きっとごん狐を優しく迎えてくれる、そんな音だ。だがしかし、夕の返事はなかった。


「あの、、夕。も、桃子だよ。。開けて?ご、ごめんね、馬鹿で。。本当にごめん、、。話聞いてくれる??」


 シーン。静寂と、左右のバリケードだけが桃子をその場に立ち尽くさせた。

「あの、えっと。じゃあ、ここから言うね。。私、夕が好きです。。えっと、すごく好き。あ、あ、あ、ああああっ!!げふぉっ!_:(´ཀ`」 ∠):_ ガクブル


 あ、あ、あい、あいし、、テル・・・。ええと、つ、付き合いたい、です!


 あ、あ、アイアイ、、アイアイ、、おさーるさー・・・じゃなくて、、うおぉぉ!!


 I LOVE 夕~~~~~っ!!!!!!!

 わぁぁぁんっでてきてぇぇぇぇ!!!いやぁぁぁぁ!!!」


 ドアにすがりつき、その場に崩れる桃子。本日5度目くらいの限界を迎えていた。。その時だった。ガチャ。ついにドアが開いたんだ。隙間から光が差し込む。天使が、、天使が、、ついにやっと、微笑んでくれるときが、、来た、、、


「ちょっとぉ~!ウルサイんですけど!?なにサワイデルの?」

「え、?あ、ソ、ソーリー・・・。」

 開いたのは、隣の部屋のドアだった。桃子、金髪美人に怒られ。


「も、もう無理・・・。泣いてお家に帰りたい。。」

 その時だった。桃子の頭上から突然、草の者が廊下にするりと飛び降りた。


「するり。桃子様。大変です、、。夕様は追跡用のGPSをつけた携帯電話をホテルにおいて、すぐ近くの赤提灯で日本酒を飲んでいた模様です!」


「えっ、じゃあいないのっ!!え、もう泣いちゃうううううわうわうあわうあうあうああんんんn!!!!」


「現在、サラリーマンの中年達に便乗して、スナック今夜も乾杯♪と言う店でカラオケで盛り上がっています!!さ、桃子様、早く。拙者の背中に乗ってください!」オンブ‼


「えっ!!ヘリいるのにおんぶっ!!ええい、ままよ!」エイッ‼


 桃子、草の者に飛び乗り、おんぶで愛の告白へと向かう。シュタタタタタ‼



 その時、隣の部屋の金髪美人は、誰からも謝られなかったと愕然としていた。

 そして、、


「モ、モモコ・・・??もしかして、、今のは・・・。」



 続く。

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