第48話 〇〇節もいよいよクライマックスに

「ゆうが好きなんだもぉぉぉーーーんっ!!」オーイオイオイオイ!!ドコニイルンダニモォ!!


 桃子、プッツンして泣きながらの絶叫。誤魔化しようのない愛の告白であった…。その時、リビングではメジェド様のぬいぐるみから光が放たれていたことを二人は知らない。プッシャー!!ヒャハー!


「え…?」

「あ?…」


 数秒後、夕の頬が赤らむ。これぞ夕陽なのだ。マブチィ!!

 思わず桃子は顔を背け、アルマジロのごとく丸くなった。毎朝のヨガの賜物です!


「ねぇ、、も、桃子…?今のは…もしかして、昨日の返事なの?」

 期待に胸を膨らませる夕。知りたい人のために注釈します。Cカップです!


 桃子はアルマジロ化したまま無言を貫いた。Eカップです。とにかく、あまりのポンコツさについては、過去に遡って説明しなければなるまい。桃子のこれまでの恋愛遍歴を…。


 桃子は12歳の時から彼女がいた。フィンランド在住のノルウェー人のメルカノだ。1度も会うことなく、写真だけで毎日日記ようなメッセージを交換していた。高校3年生までその純愛を貫く。そして辞書を引きながらやり取りしていたのでフィンランド語とノルウェー語はペラペラだ。

 やっと桃子が一人ではるばる会いに行こうとした時には相手にリアルな彼女ができていたことを知らされる。以来、ムー○ンを見るだけで涙が止まらなくなる。


 彼女と結婚するつもりだった傷心の桃子は一心不乱に推し活に励んだ。漫画、アニメ、アイドル、宝塚、、そしてメイド。推しは愛でるのが美徳と考えた桃子は、推しに恋をしたことがなかった。そんなことは願うだけで恐れ多いのです。


 その代わりに、推し活仲間からよくモテた。一緒に推し活をするのがとにかく楽しい桃子に対して、相手の方が告白して付き合う。そしてとにかく一緒にいるのが楽しい桃子はそれだけで充分すぎて、彼女と良い雰囲気になることを考えもしなかった。しびれを切らした相手の方から誘われて…を繰り返した、ただの受け身モテ女なのだ。結局、推し愛の方が強すぎて虚しいという理由で相手に振られる。長続きせず破局していた。


 つまり、夕に告白したものの、あとのことを全く自分で動かせる気がしなかった。


「あの、、桃子?それって…両思いだと思っていいの?」

「え、それは、ゴニョゴニョと言いますか…モジモジのアレで…。」

「恋人として…付き合うってことでいいの?そう思って良い?」

「あ、えっと…ニューヨークは注視するとし名言を避け・・・」


 煮えきらねぇ桃はコンポートにすらならねぇよ!!…と夕が思ったかどうかは知らないが、桃子に近づくと、アルマジロ化した桃子の体を解体して、ぐっと頭を掴んで自分に向き合わさせた。すしざん○いっ!


「ひゃうっ!み、見ないで…!刑事さんっ、わ、私じゃありません…。」

「ちゃんとこっち見て?はっきり言って?ダメならダメって言って!白状しろぉぉ!」


 夕だって今まで、恋は向こうからやってきてたんだけどね…。埒があかない女を好きになってしまった定めなのか、グイグイと桃子に返事を迫った。


「あの…電車で会った時から…好き…デス…」

「ほ、ほんと?じゃあ、」

「あの…推してました、ずっと…」

「うん、それで…?」

「え、?あ、っと…推しに恋をするなんて…恐れ多くて…」

「よくわからないけど、両思いなんだよね?私達。」


 まっすぐ見つめてくる、かわいいの人体模型、夕。


「え、夕って私のことが好きなの?な、なんで??」

「なんでって…、樹里さんのこと?」

「う、うん。あんなに好きだったのに…」

「うん、、でもね、桃子といて、すごく楽しくて、励ましてくれて、優しくて、頼りになって、そして放っておけなくて、、気づいたら私、桃子といたいの。好きなの。」


「で?」って言ってしまいそうだった桃子。「じゃあ、付き合おうよ!」って言う権利が自分にあると思えなかった桃子。そんなどうしようもない桃子を見て、夕はこう思っていた。


(なんなの、私って。。両思いなのに付き合えない呪いでもかけられているの??ちょっとメジェド様にワインをつぎ足してこようかしら、、。いえ、夕。そんな疑惑を受け入れてはいけない。ここで打ち破るのよっ!)


「スーパーァァァァ!ユウゥゥゥゥ!!

ガンバァ━━━(`・д・´)ノ━━━!!!!」


「え、かわっ!!!なにそれ、かわいっ!!??」

 桃子、推しの勇気に激しく萌え。そして夕は、


「桃子。私は貴方が好き。もしも貴方が私を好きでいてくれるなら、貴方もちゃんと好きって言って。そして、恋人になろうと言ってほしい。」


「3日以内に、その言葉がなければ、、私は鹿之助さんの秘書になります。ここを出ていきますっ!!!」ババーン‼


「え、えええええっ!!!???」


「今日は私、駅前のホテルに泊まります。ではっ!!!」

「え?え、あ、ちょ、わぁぁぁぁぁ!!!??」


 夕は財布と携帯を持つと、桃子を振り切るように家を飛び出して行った。シュバッ‼‼アーハッハッハッハ‼


 どうせ両思いなんだから、脅してでも付き合ってやる、、ぶし。。


 続く。

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