第46話 美味しい味噌汁の具の話ではありませんロマンスです。

 コンビニバイトの帰りに立ち寄ったファミレスから、夕の待つ自宅へと走る桃子。リムジンで送り迎えされてもおかしくない有名人で金持ちな桃子。徒歩以外の足はガチガチにオタク仕様に飾り立てた自転車のみの桃子。。


 息を乱して走る恋する内面ピュア童子の27歳桃子。

 手には夕に告白するために書き上げた渾身の台本が。その中身は意外とシンプルでダイレクトなものだった。


 バイーン‼玄関のドアを開ける筋子。

「なま子っ!どこにいるの!!?」

「え、どうしたの?筋子。そんなに血管を筋らせて・・・!走ってきたのっ!?」

「あのキスの、、あのキスの返事を今っ!させて欲しいっ!」

「ゑ・・・っ!!う、うん。えっと、ここで?」

「うん。はっきり言います!私はっ、、私は貴方のことがっ!!」

「す、筋子・・・!!」


 *このあと原稿用紙5枚くらいあるけど、桃子が家に着いてしまったのでリアルでお届けします。


 ハァハァ、、。よし、行くでござる。玄関を開けたら新しい物語の始まりだ!

 ド、ッごーんっ!!!Σ(゜ω゜)ビクゥ

(し、しまった。ドアの音がバイーンにならなかったでござるっ!しかし、まだ切り返せるっ!いざ、参るっ!!)


「え、なにっ!!??す、すごい音がしたけどっ!!??」

 慌てて玄関に見に来た夕。


 行くぞ!行くぞ!うぉぉぉぉぉぉ!!!プシュン・・・

 *スーパー桃子はファミレスで使い切っていた桃子。


「私はっ!!!なまこが好きぃぃぃーーーーーー!!!!!!!」


「え、?か、買ってくる??(魚屋さんかな、、)」


「え、?・・・・あ。し、しまったぁぁぁぁぁっっ!!!!!!脚本通りに言ってしまったぁぁぁぁ!!!!il||li (OдO`) il||li」


 きゃ、脚本も使えない、、スーパー桃子も出せない・・・。こうなったら、素の桃子で、、ありのままの桃子で、、打ち明けるしかないっ!!


「う、うそです。。なまこは食べたことがありません。。」

「そ、そう・・・。今度買ってくる??」

「うん、、えっと。夕。話したいことがアリマス・・・。」

「ん?とりあえず、入って座ったら?今、ご飯作ってるから♪」


 ドアが壊れていないのを見て安心した夕は、パタパタとキッチンへと戻ってしまった。


(あ・・・。行ってしまった・・・。こ、このままでは桃子のえのきレベルの強度しかない心が折れてしまう。。行けっ、、靴を脱ぐんだ桃子、、手、手が震えて、、脱げねぇ。。)


 ズリズリズリ・・・

 結局靴が脱げずに、匍匐前進で告白しにキッチンへ向かう桃子。

 ズリズリズリ・・・


「え、なんの音??桃子~?どうしたの、ってひゃぁぁっ!さ、貞子っ!?」

「いえ、、桃子です。。どうか話を聞いてください。。」

 がばっ!!もう立てない桃子。頭だけを上げてくわっと目を見開いた!

「え、こわいっ!Σ(゜ω゜)ビクゥ」

 後ずさる夕。潜在的な生命安全装置が働き、近くにあった葱を持った夕。


 葱対えのき


 えのきが負けそうなときだった。。


 ピンポーン。

 また邪魔が入ったのだ。玄関のチャイムが鳴った。来客の予定はない。


「え、誰だろ。行ってくるから、、とりあえず桃子?それ怖いからちゃんとして?」

「あ、あい・・・。ごめんちゃい。。」


 夕が玄関を開けると、そこには叶が立っていたのだった。


 続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る