第39話 よし、言うぞ。言っちゃうぞ。い、言えねぇ!なぜだ!

 夕が軽トラで桃子の家に運ばれると、段ボールから出てきた夕は1つ大きな決意をしていた。昔々、ある修行僧は、苦しい断食修行をやめて、段ボールの中で悟りを開いたとか。開かなかったとか。


 私、決めた。


 今日、桃子に言う。今日、会社を辞めたこと。そして、樹里さんのことは諦めたこと。ううん、違う。私にはもう、別に好きな人がいること。


「それは、貴方なんです。桃子。」


 そう言うの。そして、私は貴方と一緒に、【ピーチ&ユウの萌え萌えクッキングチャンネル】をやりたいと。。ずっと、貴方と一緒に居たいと。


 夕は、決意を新たにして、マンションのエントランスへと駆け出した。段ボールについていた発泡スチロールのくずが静電気で頭にいっぱいついていたけれど、そんなことは気にならなかった。おかしいな、結構なかわいこちゃんなんだけど、こう言うキャラ設定に誰がしたの??それも気にしない!


 夕はエレベーターが来るのを待ちきれずに、非常階段を登りだした。桃子の部屋は最上階なんですけど、、。大丈夫そ??


 ダダダダダっ!っと階段を駆け上る夕。

「今の私、、キングコングの恋人役みたいじゃない・・・?」

 ヒロイン夕、走る走る。ゼェハァゼェハァ‼


 バイーンッ!玄関の開く音すらなんかいつもよりコメディだった夕。

「桃子っ!話があるの!!リッスンっ!!」

 感情の高まりが抑えきれない夕。


「あ、おかえり夕。え、なんか白いのが体中についてるけどどうしたの!?」

「そんなものはただの発泡スチロールです!私の想いはそんなフワついたものではありませんっっ!!」

「え、どした?史上ないくらいパニックパニックパニック夕が慌ててるんだけど!」


「私っ!あの、貴方とっ!えっと、私、会社をっ!」


 とそこへ夕のスマートフォンに着信が入る。RRRRR

「あ、電話だよ?」

「え、今は電話なんて、。あ、でも会社からかも。」


 仕方なくバッグからスマートフォンを取り出す夕。着信の相手は叶だった。

『もしもし、おおちゃん?ごめんちょっと今、』

『もしもし、夕さん!私が今になって夕さんに頼み事をするのは失礼なことはわかってます。でもどうしても、鹿之助さんと連絡が取りたいんです。連絡先を教えてください!』

『え、それだけはナウ・オンで絶対無理なんだけど。。』

『そ、そんな!お願いです!話だけでも聞いてください!!』

『や、おおちゃんがどうとかじゃなくて、、。えっと、なんか大変そうだから話を聞くよ?良かったらここに来る?』

『はいっ!今すぐ向かいます!!』


 そうして電話を切ると、夕は叶に住所を送った。


「ご、ごめん。桃子。ちょっと、おおちゃんが大変そうだからここに呼んだの。」

「え、わかった。お茶と焼き菓子を用意するね。」*良妻


 どうしたんだろう、、おおちゃん。まさか、樹里さんと喧嘩を・・・。



 続く。



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