第38話 さようなら。私、権力には屈しない・・・節。

 桃子と夕がお互いへの恋心に気づいたものの言い出せない、拗らせ両片思いが始まって、さらにラッキースケベしあったりなんかしちゃった数日後。


 夕は会社の社長に呼び出されていた。

「佐々木君、悪いけど今日限りで会社を辞めてくれないか。俺の親父を上手く海外にゴルフに行かせたんだ。気づかれないうちに。。何から何まで申し訳ない。」

「え、急ですね。でも、わかりました。今までお世話になってお力になれずこちらこそ申し訳ありません。」

「いや、いいんだよ。君が働き続けられる場所を奪ったのはうちの親父だ。もし戻ってきて君がいないことに気づいたら、お袋に全部バラすと言うから。」

「あ、あの、、恐妻であられる・・・。恐ろしい・・・。」


 こうして夕は、口止め料として3ヶ月分の給料をもらい、樹里のいる会社を辞めた。


 急がなくてはいけなくなってしまった。夕は話が終わるとすぐに樹里の元へ。

「樹里さん、大事なお話があります。」

「ん、なに?」

「二人きりで話させてください、、会議室へ。ささっ!」

 何事かと不思議そうな樹里。会議室へ行くとさっそく夕が切り出す。


「実は…私、この会社を辞めることにしたんです。」

「え、ええ?な、なんで…。も、もしかして私がいなくなるから…とか?」

「えーと、違うんですけど、厳密に言うとそうです。」

「え?ちょっと、詳しく話して?」


「はい。実は、この会社の会長である鹿之助さん、、初めは、私が働くカフェのただの常連さんだったんです。だけど、、年齢的に私を愛人にってワケではないんですけど、、溺愛が凄すぎて、、。いつも、私を鹿之助さんの秘書か養女にって。。奥様がかなりの恐妻で、浮気をするつもりはないのでしょうけど、、そんなことになれば私も命が危ないんです。。


 やんわりかわしてたんですけど、、私ちょっと、、つい、、樹里さんと近づきたくって、、あの時は麻痺してたんです。。会長をダシに貴方に会うために、、初めて会長の誘いに乗って外で会ってしまったことから、、思ったより溺愛が激しくなり、、


 カフェの買収、子会社化、あらゆる手を尽くしたらしいんです。だけど、オーナーとここの社長がどうにか私を樹里さんの下で働くようにして下さったらしいんです。けど、樹里さんがエジプトに飛ばさ、、いえ。栄転されることになり、いよいよ秘書にさせられそうなんです。


 なので、、私、会社を辞めることにしました。せっかく沢山のことを教えて下さったのに、申し訳ありません。ありがとうございました。会長の息がかかっている人に見つかるわけにはいかないので、、この話が終わったら裏口から段ボールに入って台車で逃げるつもりです。。」


「え、ええ。。そ、そんな裏があったとは・・・。だ、だけど、生活は大丈夫なの?」ソンナニナノ?

「あ、はい。桃子と一緒に住んでますし、仕事もすぐに見つけます。しばらくは警備保障もつけてくれるそうです。」

「そっか。ま、まぁ、夕ちゃんならきっと、どこでも上手くやっていけると思う・・・。」ソ、ソンナニナノ?


「ということで、今までたくさん、お世話になりました。あの、またプライベートでもたまに連絡をさせて下さい。お友達として・・・。」

「もちろん。ありがとう、夕ちゃん。うん。友達としてね。」


 急展開がめまぐるしい中、二人はようやく、友達と言い合えるように。

 見つめ合い、微笑んで握手をしたのだった。


(ありがとう、樹里さん。本当に私、貴方のことが大好きでした。)


 キラキラと流れ落ちる涙。樹里との新しい関係性。


 夕は樹里への恋を思っても見ない形で清算し、段ボールの中へと入った。



 ゴロゴロゴロゴロ・・・


 軽トラに乗って、新しい未来へ。


 ブォン・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る